ラジカル置換反応
<1.緒言>
本実験の目的は、ラジカル置換反応により p-トルイル酸からα-ブロモ-p-トルイル酸を合
成し、さらにトリフェニルホスフィンを反応させることで、p-カルボキシベンジルトリフェ
ニルホスフィンブロマイド(以下ホスホニウム塩と略)を合成することである。
融点測定や IR、NMR の測定を行い、目的の物質が得られたのかを確認し、収量を求め
ることにより反応の進行度などについて考察していく。
p-トルイル酸は、ラジカル開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と溶媒で
あるヘキサンの存在下で N-ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させると、ラジカル置
換反応によりα-ブロモ-p-トルイル酸を与える。
C H3
COOH
BrH2C
COOH
NBS
反応機構に関しては、まず AIBN がラジカル開始剤として働き、NBSと反応してブロモ
ラジカルを生じる。生じたブロモラジカルが p-トルイル酸を攻撃し、ラジカル中間体を経
て臭素と反応することにより最終生成物ができる。なお、共に生じたブロモラジカルは再
利用される。また、臭素に関しては NBSが発生源となって生じている。
(反応機構)
N2 NC NC N N CN 2 +
AIBN
・
N Br
O
O
NC Br NC N
O
O
+
NBS
・
HOOC
C H
H
H
HOOC
C
H
H
HOOC
C
H
H
Br
Br Br
Br
2 +
臭素の発生
N Br
O
O
Br
2 N H
O
O
Br H
NBS
+ +
2 段階目の反応であるホスホニウム塩の合成については、トリフェニルホスフィンが炭素
を攻撃して SN2 置換反応を起こすことにより生じる。
Br
COOH
PPh3
PPh3+Br-
COOH
(反応機構)
CH
2
COOH
Br
Ph3P:
COOH
CH
2 PhP+
Br +
<2.試料・試薬の物性>
物質名 化学式 M (g/mol) mp(℃) bp(℃) d(g/cm3) 性質・形状など
p-トルイル酸 C8H 8O2 136.2 182 274 -
NBS C4H4BrNO2 177.9 175 - 2.098 白色固体、水に難溶
AIBN C8H12N4 164.21 105 - 1.05 白色結晶、水に不溶
シクロヘキサン C6H12 84.16 6.47 80.74 0.779 揮発性、水に不溶
アセトン C3H6O 58.08 -94.8 56.3 0.791 揮発性、引火性
無水塩化 Ca CaCl2 110.9 772 - 2.15 乾燥剤
トリフェニルホスフィン Ph3P 262.29 80 377 1.1 無色結晶
<3.実験操作と結果>
(Ⅰ)α-ブロモ-p-トルイル酸の合成
三口フラスコ(100 ml)、玉入り冷却管、塩化カルシウム管で還流装置を組み、三口フラ
スコに p-トルイル酸 3.0 g(22 mmol)、NBS 4.5g(25mmol)、ヘキサン 40 ml を入れて撹拌
を開始した。AIBN 0.3 g(1.8 mmol)を入れると白濁液となり、その溶液を 90 ℃の水浴で 1
時間還流した。30 分経過した時点で、酢酸エチルを展
開溶媒として TLC チェック(右図)を行った。
各スポット①~③の Rf 値(移動率)は以下のように
なった。
①Rf値 = 0.10 ②Rf値 = 0.69 ③Rf値 = 0.90
各スポットについてだが、②の
ラジカル置換反応
<1.緒言>
本実験の目的は、ラジカル置換反応により p-トルイル酸からα-ブロモ-p-トルイル酸を合
成し、さらにトリフェニルホスフィンを反応させることで、p-カルボキシベンジルトリフェ
ニルホスフィンブロマイド(以下ホスホニウム塩と略)を合成することである。
融点測定や IR、NMR の測定を行い、目的の物質が得られたのかを確認し、収量を求め
ることにより反応の進行度などについて考察していく。
p-トルイル酸は、ラジカル開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と溶媒で
あるヘキサンの存在下で N-ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させると、ラジカル置
換反応によりα-ブロモ-p-トルイル酸を与える。
C H3
COOH
BrH2C
COOH
NBS
反応機構に関しては、まず AIBN がラジカル開始剤として働き、NBSと反応してブロモ
ラジカルを生じる。生じたブロモラジカルが p-トルイル酸を攻撃し、ラジカル中間体を経
て臭素と反応することにより最終生成物ができる。なお、共に生じたブロモラジカルは再
利用される。また、臭素に関しては NBSが...