生活科のこれまでの歩みをまとめるとともに実際の授業における教育的成果と課題を明らかにし、生活科のこれからの展望について具体的な事柄を示して述べよ
(1章)生活科のこれまでのあゆみ
平成元年(1989)の学習指導要領の改訂で、小学校の低学年に生活科が新設された。それに伴って、従前の低学年の社会科と理科は廃止され、戦後教育40数年、小学校での教科の改廃が初めて行われた。小学校低学年の具体的な体験学習の不足、また公的資質を育成するという狙いが十全に果たされていないという声が従来からあったためである。体験学習によって、実際に目で見るだけでなく、耳で聞く、手で触る、においをかぐ、舌で味わうなど、身体の諸感覚を駆使することを通して学ぶ。それにより、忘れることのできない記憶となって、身体に刻まれる。これが、豊かな感性と、一人ひとりの個性を、子供に培ってきたのだと考えることができる。
また、昭和30年代終わり頃から40年代にかけて、低学年の社会科や理科の在り方が問題となった。その結果、「他教科、道徳等と観連させて、効果的に指導すること」「児童自ら事物や現象にはたらきかけること」などといった指摘が...