物語文学の流れを概観する中から、その美意識に変遷を踏まえて、「文学」とは何かについて考察しなさい。
合格リポートです。
「適切にまとめられ、かつ作成者なりの文学の在り方も提示されている」と評価をいただきました。
平安時代に成立した物語文学の流れを、作り物語を中心に概観し、文学とは何かについて考える。
まず作り物語について説明する。物語文学はその物語の特徴によってさまざまな種類に分類される。そのうちの作り物語は、伝奇性、空想性を主とする伝奇物語と、写実的傾向を帯びている小説物語という二つの系統を持つ、虚構性の濃い物語文学である。
「物語のいで来はじめの祖」といわれている「竹取物語」は、作り物語の始発である。作り物語の中でも、伝奇性、空想性の濃い伝奇物語であり、「その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。」から始まる発端の奇異と、かぐや姫の昇天による余韻といった結末の神秘とによる超現実性が大きな魅力といえる。しかしかぐや姫の性格描写には欠けている。特に心理の細かい描写は見られず、抒情性が低く叙事性が重視されているといえよう。文章には、漢文体から影響を受けた文語性が認められ、当時の口語体に近い文章で書かれたものが多いという平安朝の物語文学の中では珍しいと考える。また、話型という点にも言及すると、竹取物語は難題求婚譚である。かぐや姫に対する五人の貴公子の求婚譚と、求婚者たちに対して難題をぶつける難...