Ⅰ.序論
施設内虐待(Institutional Abuse)とどう向き合えばよいか。援助者が利用者を虐待するという事実があることは、とても悲しいことだ。援助者は本来、人が好きで、人の笑顔が見たくて、そして人の役に立ちたくて援助者になったはずだ。それなのにどうして理想とは正反対のこと、すなわち虐待をしてしまうのか。利用者を傷つけてしまうのか。また、施設内虐待の発生を少しでも減らすためにはどうすればよいか。これら2つのことをふまえて、施設内虐待とどう向き合うか考えてみたいと思う。
施設内虐待が起こる背景には、やはり利用者の介護そのものがとても大変であるということと、福祉職場は「マイナスの体質」が蔓延しやすく、放置すると利用者の権利を損なう職場に陥りやすいという特性があることが考えられる。どうすれば介護は良い意味で援助者にとってやりやすいものとなり、それが同時に、利用者が快適に過ごせることにつながるか。また、福祉職場の「マイナスの体質」を改善するためにはどうすればよいか。これらを考えることによって、施設内虐待の発生が少しでも減少すると思われる。
Ⅱ.本論
A.虐待という言葉について
虐待と日本語に訳されているabuseという言葉は、他に「乱用」「悪用」「誤用」といった意味を含み、欧米では日本で使われているよりももっと広い意味で使われている。日本語で「虐待」というとかなり強い言葉になってしまうが、本来はもっと広い意味の言葉である。そこでabuseという言葉のかわりに、「不適切な関わり」という意味のmal-treatmentという言葉を使う人もいる。
B.虐待の種類
虐待の種類の分類はいくつかあるが、ここでは「身体的虐待」「ネグレクト」「性的虐待」「心理的虐待」の4つに分類したいと思う。
身体的虐待(physical abuse)
ICCA定義に基づく厚生省定義は
外傷の残る暴行、あるいは、生命に危険のある暴行(外傷としては、打撲傷、あざ<内出血>、骨折、頭部外傷、刺傷、火傷など、生命に危険のある暴行とは、首をしめる、ふとん蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、毒物を飲ませる、食事を与えない、冬戸外にしめ出す、一室に拘禁するなど)
大阪府検討委員会定義は
親、または親に代わる養育者により加えられた身体的暴行の結果、児童に損傷の生じた状態で、以下の用件を満たすもの。虐待行為が①非偶発的であること(単なる事故ではないこと)。②反復継続的であること。③単なるしつけ、体罰の程度を越えていること。
となっている。体罰と身体的虐待の境目はとても微妙なものだ。身体への有形
力の行使は、仮に利用者の問題行動の減弱を目的に行われたいわゆる「罰(pu-
nishment)」としての意味をもっていたとすれば、それは行使者との信頼関係
の有無、罪の理解の有無にかかわらず「体罰」であり、その「体罰」の中で身
体の損傷を伴うものはすでに「体罰」ではなく「虐待」である。体罰が良いか
悪いかは別にして、身体的損傷を伴う行為は当然許されてはならない行為とし
て別のカテゴリーとして認識しなければならない。また虐待かどうかについ
て考えるとき、有形力の程度や外傷の有無のみに目を奪われることは行為を受
けた被害者の心の傷を見失ってしまいがつだということも考えなければなら
ない。
2.ネグレクト(Neglect)
児童虐待の防止等に関する法律によると、
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、又は長時間の放置とその他の保護者としての監護を著しく
Ⅰ.序論
施設内虐待(Institutional Abuse)とどう向き合えばよいか。援助者が利用者を虐待するという事実があることは、とても悲しいことだ。援助者は本来、人が好きで、人の笑顔が見たくて、そして人の役に立ちたくて援助者になったはずだ。それなのにどうして理想とは正反対のこと、すなわち虐待をしてしまうのか。利用者を傷つけてしまうのか。また、施設内虐待の発生を少しでも減らすためにはどうすればよいか。これら2つのことをふまえて、施設内虐待とどう向き合うか考えてみたいと思う。
施設内虐待が起こる背景には、やはり利用者の介護そのものがとても大変であるということと、福祉職場は「マイナスの体質」が蔓延しやすく、放置すると利用者の権利を損なう職場に陥りやすいという特性があることが考えられる。どうすれば介護は良い意味で援助者にとってやりやすいものとなり、それが同時に、利用者が快適に過ごせることにつながるか。また、福祉職場の「マイナスの体質」を改善するためにはどうすればよいか。これらを考えることによって、施設内虐待の発生が少しでも減少すると思われる。
Ⅱ.本論
A.虐待という言葉について
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