赤外分光法
1.実験目的
指定された各化合物の赤外線吸収スペクトルを測定し、得られたチャートについて吸収
帯の帰属を行い、各サンプルにおいてカルボニルに帰属しうる吸収帯の位置のズレについ
て考察する。また、実験を通して赤外線分光法の原理や操作法について学ぶ。
2.原理
試料に赤外線をあて、双極子モーメントが変化する分子骨格の振動、回転に対応するエ
ネルギーの吸収を測定するのが、赤外線分光法である。有機化合物を構成する官能基はそ
れぞれほぼ固有の振動スペクトルを与えるので、吸収波数より試料の定性分析を、また吸
収強度から定量分析を行うことができる。また、この分析法は、固体、液体、気体のすべ
てにおいて迅速に測定を行うことが可能である。
分子が赤外線を吸収するためには、振動により分子の電気双極子モーメントμが変化し
なければならず、μは電荷qと分子のある中心から各電荷までの距離dを用いて、
μ=qd
と表される。分子の双極子モーメントとは、分子を構成している個々の原子上に正と負の
部分電荷が生じるときに発生するものである。分子が振動するとき、この双極子モーメン
トの変化量が大きいほど赤外線の吸収は大きい。双極子モーメントの変化量は、振動して
いる原子間の距離が短いほど、また部分電荷が大きいほど大きく、強い赤外吸収が観測で
きる。
分子は通常、振動も回転もしている。分子に光を当てて分子の振動準位を励起したとき、
励起前と励起後の分子の回転準位も異なることが多い。したがって、吸収された正味の光
エネルギーは振動エネルギーに回転エネルギーを加えるか、あるいは減じたものに等しい。
また、分子が振動すると、分子の構造により中心からの各電荷分布は変化する場合としな
い場合がある。したがって、赤外分光法で分子の振動すべてが観測できるわけではなく、
双極子モーメントが変化する振動のみが赤外線を吸収する。
複雑な分子ではいろいろな振動が可能であり、その数は簡単な法則から決定できる。N
個の原子からなる分子は、各原子に三つの独立した空間的座標があるため、合計3N個の
自由度をもつ。このうち 3 個は三つの軸に沿って並進運動を規定し、さらに 3 個は同じ三
つの軸に関する回転運動を規定する。直線状分子ではその軸に対する慣性モーメントが0
のため、この自由度が一つ少ない。したがって実際の自由度nは次のように表される。
直線分子上の自由度 n=3N-5
非直線分子上の自由度 n=3N-6
これらの式により計算される基本振動は様式により、結合の長さが変化する伸縮振動と結
合角が変化する変角振動に分類される。さらに、対称性に基づいて、分子の対称性がすべ
て保たれる対称振動、一つまたは二つの対称要素がくずれる逆対称振動に分類される。
3.実験操作
3 種類のサンプルを選び、それぞれの赤外線吸収スペクトルを指定された方法で測定した。
3つのサンプルと測定方法は以下の通りである。
①アセトン(direct法)、②アセトフェノン(direct法)、③ベンズフェノン(nujol 法)
4.実験結果
顕著に現れたピークについてのみ、帰属を行っていく。
①アセトン
ピーク情報 波数(cm
-1)
5 3415.23 :C=O振動の倍音振動、C=O伸縮の約2倍の振動数
6 3002.62 :CH2基の対称C-H伸縮振動
7 1710.55 :C=O伸縮振動
8 1427.07 :CH3基の逆対称C-H変角振動
9 1363.43 :CH3基の対称
赤外分光法
1.実験目的
指定された各化合物の赤外線吸収スペクトルを測定し、得られたチャートについて吸収
帯の帰属を行い、各サンプルにおいてカルボニルに帰属しうる吸収帯の位置のズレについ
て考察する。また、実験を通して赤外線分光法の原理や操作法について学ぶ。
2.原理
試料に赤外線をあて、双極子モーメントが変化する分子骨格の振動、回転に対応するエ
ネルギーの吸収を測定するのが、赤外線分光法である。有機化合物を構成する官能基はそ
れぞれほぼ固有の振動スペクトルを与えるので、吸収波数より試料の定性分析を、また吸
収強度から定量分析を行うことができる。また、この分析法は、固体、液体、気体のすべ
てにおいて迅速に測定を行うことが可能である。
分子が赤外線を吸収するためには、振動により分子の電気双極子モーメントμが変化し
なければならず、μは電荷qと分子のある中心から各電荷までの距離dを用いて、
μ=qd
と表される。分子の双極子モーメントとは、分子を構成している個々の原子上に正と負の
部分電荷が生じるときに発生するものである。分子が振動するとき、この双極子モーメン
トの変化量が大...