ルソーの社会思想について述べよ。
ルソーの社会思想について述べよ。
ジャン・ジャック・ルソーは「私は感じる、ゆえに私は存在する」と、人間の感情・感性を人間存在の原理に置くべきだと主張した。思惟でなく感じることが人間の自然本性であるとしたがそれは理性の否定ではなく、理性の健全な発達の前提条件に自然的感情が必要であると説いた。彼も人間の状態を自然状態と社会状態に分けて考えた。前者は人間の基本的人権に由来し政治的・法的レベルで考えられていたが、彼は人間は善なる本性を持ち、人間のうちに見られる一切の悪は人間が形成した文明に由来するという固有の性善説を展開した。彼は主著『エミール』で「すべては創造主の手を離れる時は善であり、すべては人間の手で悪くなる」として、自然状態では全て善であるが文明社会のなかで全ての悪徳が生じたと主張した。彼は自然状態にある人間を自然人と呼んだが、歴史上の過去の人類よりも人間の内面の良心の声を意味した。「もし人類の保存が憐れみの情という自然的感情にではなく、人間の理性に委ねられているとしたら、とうの昔に人類は滅亡していたであろう」として、文明の進歩が人類の幸福であるという啓蒙主義全盛のフランスで、文明...