資料の原本内容

ニンテンドーDS に関するミクロ経済学的考察
問題意識
現在(2007 年 1 月)、ニンテンドーDS は品薄状態といってもいいであろう。発売からかな
りの日数がたつが、未だに店頭に並ぶことは少なく、予約して入荷を待つような状態だ。
しかし、オークションなどを使えば買うことは可能である。その際の価格は、定価を上回
っている。
ミクロ経済学的に考えると、価格が伸縮的に動き需要と供給が一致するはずである。し
かし、この現在の状況は需給が一致していないのに、DS の定価は変更されていない。この
ことはどのようなことに原因があるのかを考察する。
分析
まず、DS が供給不足であることをオークションの価格から考えてみる。
もし DS が定価で需給一致しているのであれば、オークションでの価格は定価と同じ、も
しくは低くなるはずである。これはオークションによる手数料（送料や代金の振り込み手
数料など）があるためであり、オークションでは「定価－手数料」という価格で落ち着く
はずである。
しかし現実ではこうはなっていない。リンクを張っておいたが、文章でも明記しておく
と、定価 16800 円のところ 20000 円強ぐらいで落札されている。このことからニンテンド
ーDSが供給不足であると言えるだろう。
では何故、任天堂は DS の価格を上げないのだろうか。
右に現在の DS 市場の需要曲線（青色の線）・供給曲線（オ
レンジの線）・現在の価格（赤色の線）を書いた。本来な
ら、赤い線が均衡価格へ近づいていく（赤い線が上へシフ
トする）ことによって需要と供給は一致するはずである。
「供給不足が解消されない理由は、単に任天堂の生産ライ
ンが追いついていないだけじゃないの？」
などと考える人もいるかもしれないが、それは経済学的な考え方ではない。また、いちい
ち価格を変更していては宣伝した広告の価格をいちいち直さないといけなくなってしまう、
これは短期的な現象で任天堂は今後供給を増やし価格を上昇させるはずだ、などの議論も
ここではしない。
ここでは需要と供給という経済学の基本的な考え方にのっとって任天堂の行動を分析し
てみようと思う。
なぜ任天堂が価格を上昇させないのか。それは任天堂が
現在の状況を均衡していると考えているからではないだ
ろうか。つまり任天堂が右のような需要曲線を想定してい
ると考えるのである。
このように需要曲線が価格弾力性の非常に高い状況に
なっている理由はなんだろうか。価格弾力性とは、この市
場から離れる価格ということも出来る。ここでこの市場か
ら離れた人はどの市場にいくのであろうか。
それはおそらく同じ携帯ゲーム機市場である PSP市場
であろう。PSPが DS の代替財であるため、ある一定の点から弾力性は非常に高くなり、
需要曲線が水平に近づいているのである。
DS の価格をある一定以上にしてしまうと、需要者は PSP市場のほうに流れてしまう可
能性があるのを任天堂は嫌っているのではないだろうか。これが任天堂が DS の価格を無闇
に上げない理由である。
しかしながら、オークションの価格が 20000 円という PSPとほぼ同じ値段で売買されて
いることを考えると、任天堂はもう少し価格を上げることは出来るように思う。このよう
に若干低い価格でとどめていることを考えると、「携帯ゲーム機市場のパイをソニーより多
く取ろう！」という任天堂の強い経営戦略の意思があることは間違いないだろう。
このように任天堂がソニーの商品に対抗しているということは、一般的にも言われてい
ることではあるが、このように需要曲線を仮定するとそのことも理論的に考えることが出
来る。
課題点
このレポートを書くにあたって、ほとんど計量的なアプローチは行っていない。そのため
ここでした議論がまったく当てはまっていない可能性もある。機会があればそのような点
を補完したものを作成したい。

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