上医が国を医す

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    上医が国を医す(いやす)。佐久病院、および若月俊一の素顔に迫る。研修先病院の正体を見極める。病院とは一定の歩幅を保つ。弱気インテリである若月のバイタリティー、体力。
    インテリには無縁の体力。裕福な幼少時代が他人を受け入れる懐の深さをつくった。旧制松本高校。都落ちした屈折した悲哀。マルクスボーイ。将来へのぼんやりとした不安。世界恐慌。プロレタリアとブルジョア。資本家に搾取され続けている労働者、農民のために立ち上がることはインテリの正義。レーニンの職業的革命家。松高での三年間の理論武装。抜きがたいエリート意識。バイタリティー。信念さえあれば飛び越せる。ものに即し、実証的な信念こそが飛び越しを可能にする。東大医学部。社会医学研究会。共産主義青年同盟。左翼。検挙。ずるさ。ほんとうの人間として生きていく。後衛論。外科医。運命の神のバックアップ。社会的な問題意識。労働者。行動を重んじる知識人。センチメンタルヒューマニストとクールな経営者。おセンチ。笑うものより泣くもののための医療。最後に笑うものが本当に笑うものだ。急げ、然らずんば遅れる。高度経済成長。インフレーション。自民党の各県一医大構想。農村医大。人間を人間として把握するヒューマニズム。(技術主義、専門主義、臓器主義を受けて)辺地医師確保。自治医科大学設立。マグサイサイ賞。若手スタッフの国内留学。東京にいなくったって出来るんだってことだな。
    参考資料
    生涯を農村医学の発展に尽くした佐久総合病院の若月俊一名誉総長が22日、96年の生涯を閉じた。若月さんの評伝「信州に上医あり」などを著した同病院内科医長、南木佳士(本名・霜田哲夫)さん(54)に、若月さんの素顔を語ってもらった。【藤澤正和】  私は、若月さんの著書「村で病気たたかう」(71年、岩波新書)を読み、「そんな理想的な病院があるのか確かめたくて」、77年から勤務した。すでに病院は農民とともに歩む医療現場として、全国に知れ渡っていた。若月さんは強烈な個性を持ち、いくつもの顔を持っていた人。俗っぽくもあり何とも言えない魅力的な人だった。  小説「ダイヤモンドダスト」で芥川賞を受賞した私を若月さんは部下というより作家と見てくれた。ご自身も文学をやりたかったが、「文学では飯が食えないから医者になった」と話していた。芥川賞をとった時、「東京にいなくてもちゃんと出来るんだよな」と喜んでくれた。  「農村医学をやってきた先生は、実際に田んぼに入ったことがおありですか」と意地悪な質問をしたことがある。正直に「1回だけ」とおっしゃられた。地域に同化して小さな医療をやる人もいれば、周囲を啓蒙して大きなことをやっていく人もいる。先生は後者の典型だった。  細部にこだわらず、大きな木を切り開いて先に進む。後に続いて道をならす実務は、私たちより上の引退された優秀なスタッフが支えていた。私たちの世代はその遺産を受け継いでいるので、楽だったといえる。「金と人事はオレがやる」が口癖。「黒いネコでも白いネコでも、金を出すところなら、どこからでも取ってくるぞ」と言っていた。いろいろな人に魅力を持たれた人だと思う。  
    「信州に上医あり」を読んで
     信州に上医あり。全国にそう言わしめたのは、おそらく若月俊一氏だけだろう。終戦直前に辺地の小さな診療所に赴任し、農村医学という新しい概念を創始された若月氏。「農民とともに」歩んできた彼の一生は96年という長い歳月を経て、今年の8月22日に幕を閉じた。
     ここにその魅力にとりつかれて若月氏を追った人物がいる。作家と医師という二面の顔を

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    上医が国を医す(いやす)。佐久病院、および若月俊一の素顔に迫る。研修先病院の正体を見極める。病院とは一定の歩幅を保つ。弱気インテリである若月のバイタリティー、体力。
    インテリには無縁の体力。裕福な幼少時代が他人を受け入れる懐の深さをつくった。旧制松本高校。都落ちした屈折した悲哀。マルクスボーイ。将来へのぼんやりとした不安。世界恐慌。プロレタリアとブルジョア。資本家に搾取され続けている労働者、農民のために立ち上がることはインテリの正義。レーニンの職業的革命家。松高での三年間の理論武装。抜きがたいエリート意識。バイタリティー。信念さえあれば飛び越せる。ものに即し、実証的な信念こそが飛び越しを可能にする。東大医学部。社会医学研究会。共産主義青年同盟。左翼。検挙。ずるさ。ほんとうの人間として生きていく。後衛論。外科医。運命の神のバックアップ。社会的な問題意識。労働者。行動を重んじる知識人。センチメンタルヒューマニストとクールな経営者。おセンチ。笑うものより泣くもののための医療。最後に笑うものが本当に笑うものだ。急げ、然らずんば遅れる。高度経済成長。インフレーション。自民党の各県一医...

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