村上春樹「図書館奇譚」を読んで

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村上春樹の『カンガルー日和』より、「図書館奇譚」について考察を行った。引用については、本著作のみである。分析的に考察したつもりである。レポートなどで参考にしてもらえると良い。

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―村上春樹「図書館奇譚」を読んで―
・図書館奇譚を読んで
 この小説は春樹らしいシュールさが際立つ作品である。図書館の地下での不条理かつ不可思議な出来事が「僕」を巻き込んで行き、最後に現実へと抜け出てからも母の死という壮絶な最後で締められているのだが、もう少し慎重にこの本文の中身を分析すると、そこには現実と非現実との境界が感じられないような不可解な点がいくつも散りばめられていることに気づくはずである。今回の原稿では、特にその辺りを私なりに考察してみた。
・「僕」と母
 作品の最後で主人公の「僕」は「いったいどこまでが本当に起こったことなのか、僕にはわからない 」という風に締めくくっている。しかし、そもそもこの作品において「僕」が現実だと認識している世界や、彼自身についてもまた奇妙なのである。特に最初に気になったのは、「僕」と母の関係である。母は「僕」が小さい頃に犬に噛まれて以来心配性になり、帰りが遅くなると狂乱状態になるんだと老人に述べるのだが、母の狂乱の種はまさに「僕」が犬に噛まれたことに由来する。(この点については後で詳しく考察を試みている。)しかし、噛まれたことがそれ程大変な事態...

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