『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
第40問
小問1
1 Cへの請求
Dは、Cに対し、落下した枝にぶつかって怪我をしたことにつき、不法行為に基づく損害賠償請求(709)をする。かかる請求が認められるには、①「故意又は過失」、②「権利又は法律上保護される利益を侵害」、③「損害」、④(①②間・②③間の)因果関係が必要である。
Cは、木の枝の剪定に際し、誤って枝に傷を付けているから、①過失がある。また、Dは怪我をしているから、②身体という権利の侵害と③損害がある。
そして、Dの怪我は、Cが傷を付けた枝が落下してぶつかったことによる。枝の落下は、直接的には風速10mの風が吹いたことによるが、風速10mは、それだけで枝が折れて落下する程の強さではない。そうすると、Cの枝に傷を付けるという過失がなければ、枝が折れて落下し、Dが怪我をすることがなかったといえる。そのため、④因果関係もある。
したがって、かかる請求は認められる。
2 Bへの請求
(1) Dは、Bに対し、同損害について、枝の剪定を指示したBにも、不法行為に基づく損害賠償請求をする(709)。②権利侵害、③損害は前述の通り、認められる。
ア Bに①過失はあるか。過失と...