『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で学ぶ民法演習32
第一.小問1について
1.本件において、AはBがカーナビを無料で付けるということを条件にして、新車の売買契約を締結している。もっとも、Bは新車の引き渡しは履行しており、債務不履行に陥っているのはカーナビについてだけである。そこで、Aとしては、本件売買契約の債務不履行解除(民法(以下、特記無き限り省略する。)541条)による原状回復請求権に基づく60万円の返還請求をなすことができるか。付随的義務の不履行が541条解除の解除原因となるかに関連して問題になる。
2.(1)まず、債務不履行解除による原状回復請求権の要件事実は、①債務の発生原因、②履行期が経過したこと(催告)、③遅滞の違法性(反対給付の履行の提供)、④催告後相当期間が経過したこと、⑤相当期間経過後の解除の意思表示(540条)であるが、本件で①乃至⑤の要件を充足するのは明らかである。
(2)そして、民法が債務不履行を理由とする契約の解除を認めるのは契約の要素をなす債務の履行がなく契約をなした目的を達成できない場合を救済するためである。そうすると、契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の...