『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
25 債務不履行と損害賠償
〔小問1〕
1,BはAに対して債務不履行に基づく損害賠償請求(415条)をすることができないか。
(1)債務不履行に基づく損害賠償請求が認められるためには、①債務の本旨に従った履行が不能であること②①につき債務者の責めに帰すべき事由があること③債務不履行が違法であること④①による損害の発生 ⑤④が賠償のすべき範囲に含まれることが必要である。そこで、かかる要件を満たすかを以下検討する。
(2)①について
ア、まず、AB間の本件版画売買契約に基づいてAはBに対して本件版画を引き渡す債務を負っている。
イ、次に、債務の本旨に従った履行が不能であるか否かは社会通念に従って判断されるところ、売買目的物
である絵画が第三者に盗まれてしまった以上は社会通念上もはやAがBに本件絵画を引き渡すことはで
きなくなっていると言えるから、本件絵画引渡債務は履行不能になっていると言える 。
ウ、したがって、債務の本旨に従った履行が不能であると言える。
(3)②について
ア、本件では、AでなくDが本件絵画を運んでいる間に絵画が盗まれ履行不能になっている。この...