『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で考える民法演習 第23問 譲渡担保その3
第1 小問1
担保権者Bは、Cに対し、Aから譲渡された生地の返還を請求できるか
1 Bは、Cに対し搬出された生地にBの譲渡担保権が及ぶとして、所有権に基づく返還請求を主張することが考えられる。
(1)譲渡担保は、目的物を譲渡する形式と担保目的という実質とを調和し、債権担保の目的を達するのに必要な範囲における所有権移転と解する。
そして、譲渡担保の目的物が、構成部分の変動を予定する集合動産である場合であっても、その種類、場所および量的範囲を指定する等の方法で対象が特定されているのであれば、一物一権主義に反することなく、その集合動産を一括して一つの譲渡担保の目的物といえると解する。
(2) 本件では、「甲倉庫」という場所に搬入される、「原材料用生地」という種類について、「一括」という量的範囲において譲渡担保の対象としている。したがって、集合動産である本件生地について特定がなされており、集合物として譲渡担保の目的物になる。
よって、本件譲渡担保契約において、集合物たる本件生地は、債権担保の目的達成に必要な範囲において、...