『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で学ぶ民法演習21
第一.小問1について〜複数の抵当権との関係〜
1.(1)本件において、Aは、Bの債権担保のために甲機械に譲渡担保権を設定している。その後、Aは、Cについても譲渡担保権を設定しているが、Cは有効に譲渡担保権を取得するか。譲渡担保の法的性質に関連して問題となる。
(2)ア.この点、債権者に所有権が移るという形式に注目しつつ、債務者にも何らかの機能が残っていることが法的構成に反映されるべきである。
そこで、第三者に対する関係では、目的物の所有権は債権者に移転する。(所有権的構成)
イ.そして、設定者が二重に譲渡担保を設定した場合、動産において、譲渡担保権者が対抗要件(占有改定)を備えていれば、原則として第三者は譲渡担保権を取得できない。なお、占有改定による即時取得(民法(以下、特記無き限り省略。)192条)も認められない以上、第三者は即時取得の可能性もない。
(3)以上より、Bは甲機械の所有権を取得し、Aは甲機械の所有権を有しないので、権原なきAはCに譲渡担保権を設定しえず、Cは譲渡担保権を取得しない。
第二.小問2について
1.(1)本件では、譲...