『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
『事例で学ぶ民法演習』 解答 第16問
小問1
Cの主張は、自身が甲乙の「共有者
であることから、その全部を利用できるという旨のものである(249)。他方、ABの主張はCが「共有権」ではないというものである。
本件では、ABCは、甲乙を出資(会28①)してK株式会社を設立している。株式会社は、会社法上の「会社」であり(同2①)、「会社
は「法人
である(同3)。そのため、Kは法人である。そして、甲上の乙を改築した別荘でペンション経営を行うKにとって、甲乙の所有はその「目的の範囲内」であるから、「法人」Kは甲乙の所有権を有する(34)。
そうすると、Kは設立者のABCとは別個の独立した人格として甲乙を所有していることになるから、もはやCは甲乙の持分権を有せず、「共有者」とはいえない。
よって、Cの主張は妥当ではなく、ABの主張が妥当である。
小問2
Dの主張は、宿泊費9000円のうち3000円を、Bに対して有する5000円の債権のうち3000円の対等額で相殺(505)するというものである。かかる主張は認められるか。
相殺が認められるには「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担す...