『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
問題2
第1、質問事項(1)について
1、質問前段
(1) 本件では、Aの失踪宣告が取り消されているため、遡及的にBはAを相続していなかったことになる(32条1項前段、121条)。そのため、Bは無権利で甲不動産をDに処分したことになる。そうすると、Dから甲不動産を転売されたEも甲不動産の所有権を取得せず、AはEに対して所有権に基づいて甲不動産を取り戻すことができるのが原則である。
(2)もっとも、失踪宣告の取消しは、失踪宣告後その取消前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない(32条1項後段)。本件甲不動産売買は何れも失踪宣告前になされているため、甲不動産売買が「善意」でした行為にあたるのであれば、失踪宣告取消の効力は及ばず、Aは甲不動産を取り戻すことができないということになる。
ア、 では、DE間の甲不動産売買が「善意」でした行為と言えるか。
(ア)まず、「善意」とは、「行為」当時において失踪宣告の取消事由を知らないことを意味する。そして、失踪宣告取消制度が失踪者保護するための制度であることに鑑み、出来る限り静的安全を保護すべく、「行為」の当事者双方が善意であることを要すると考えるべ...