事例演習民事訴訟法 第3版(新版)の解答です。事例問題形式での民亊訴訟法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を網羅するとともに「考えさせられる」良問が揃っているため、民事訴訟法における最良の演習書であると考えます。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
第30問
第1 学生abについて
1 上告と上告受理申し立てについて
上告は、控訴と異なり、特別の理由がある場合に限りすることができるとされ、312条各項に該当する事由が、その特別の理由となる。312条各項に該当するものを理由とする上告を権利上告と呼ぶ。
また、権利上告では、312条各号該当事由でしか上告することができないため、これを補完する制度として、上告受理申し立て(318条)がある。上告すべき裁判所が最高裁判所である場合、法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる事件について、上告受理申し立てをすることができ、最高裁の裁量で、上告を受理することができる制度である。これを、裁量上告と呼ぶ。
2 Yの権利上告の可否(学生aの疑問)
(1)Yは、時機に遅れた攻撃防御方法(157条1項)であるとして新主張を却下した控訴審の決定に対して不服がある。
しかし、権利上告として上告するための要件である312条各項の事由には該当しないため、権利上告することはできない。
3 Yの裁量上告の可否(学生bの疑問)
そこで、Yは、以下の「法令の解釈に関する重要な事項」を含むとして上...