会社法事例演習教材 第二版の解答です。問題は紛争解決編(第Ⅰ部)と紛争予防編(第Ⅱ部)に別れており、それぞれ12テーマずつ。会社法における最良の演習書であると考えます。
解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。 そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、充実した内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有効な内容となっております。
【設例5-1】 取締役の報酬に関する諸論点
(1) 株主総会決議で定められた報酬総額の上限
[Q1]
1、一般に取締役報酬額上限を知る方法
(1) 取締役の報酬は、定款または株主総会決議で定めなければならない(361条)。
(2) 取締役の報酬が定款で定められている場合
定款の閲覧請求(31条)をすることで取締役の報酬の上限を知ることができる。
(3) 取締役の報酬が株主総会決議で定められている場合
株主総会の議事録の閲覧請求(318条4項1号)をすることで、取締役の報酬の上限を知ることができる。
2、ケース(1)のP社株主の場合
P社は、定款で取締役の報酬について定めていないため1(1)の方法は使えない。
また、会社が株主総会議事録を据え置かなければならないのは本店でも10年(318条2項)である。そのため、報酬額の上限を決議した平成2年から20年以上経っている本件においては1(2)の方法も使えない可能性が高い。したがって、株主は取締役の報酬総額がいくらであるかを知ることができない。
3、実際に支払われた報酬額を知る方法
株主は、会社にその作成が義務付けられて...