<宇宙と人間レポート>
人間原理とは一言でいえば、この世界がこのような姿をしているのは人間がいるからだという考え方である。このような姿とはなにか。それにはさまざまな側面がある。たとえばわれわれの宇宙はビッグバンにおいて膨張を開始して以来、百億年になるがなぜこのように長い時間なのか。どうして1万年ではないのか。光速度はどうして秒速30万キロメートルなのか。秒速1キロメートルではいけないのか。どうして空間は3次元であり、たとえば5次元ではないのか。このような一見とんでもない質問にこたえるのが人間原理である。
人間原理によれば、宇宙の存在は人間、さらに一般的には知的生命の認識にかかっているという。もし知的生命のいない宇宙があったならば、その存在は認識されないのだから、存在しないのも同然である。
この立場は天文学でよく言われる選択効果の一種である。選択効果とは、観測にかかりやすいものをよりとりあげてしまうことである。たとえば星の光度の分布を観測したとすると、観測結果そのままでは明るい星を数え過ぎることになる。明るい星は遠方にあっても見えるのに、暗い星は近くになければ見えないからである。た...