【日大通信】漢文学Ⅰ_分冊2 H23-24年度課題 合格リポートです。「『呂氏春秋』における神話的記述についてまとめなさい」
「積極的に学習に取り組んでいることがわかるリポートです」との講評をいただいております。
参考用としてお使いください。
『呂氏春秋』における神話的記述といえば、殷の湯王に仕えた名宰伊尹の出征にまつわる記述である。この神話的記述を神話学的に分析することで、中国古代人の原始心性を明らかにしていきたい。
伊尹の出生にまつわる神話的記述の概要とは、『既に伊尹を身籠っていた女性の夢に神が現れ、「臼から水が出てきたら、東に逃げよ。振り返ってはならない」と告げられた。翌日、本当に臼から水が噴き出してきたので、彼女は東へ向かって駆け逃げた。十里ほど進み、一息ついて振り返ってみると、村はすべて水浸しとなっていた。そして彼女は、(禁を破って)その光景を見てしまったがために、中空の桑の木と化してしまった。そして、空桑となった伊尹の母の骸から、桑摘みの女子が伊尹を取り出し、その君に献じた』という内容である。
神話とは、いわゆる“昔話”や“伝説”とは異なり、一国・一民族全体の原始心性の記述である。つまり、その原初形態において、存在論的な脈絡を有し、その神話を生み出した民族の最も原初的な心性の心象を象徴的に記述するものである。そのため、その記述を分析することによって、その民族の考え方や、いわゆる“原始心性”の一旦を明らかにす...