ソーシャルワークにおける自己覚知とは何か

閲覧数6,689
ダウンロード数52
履歴確認

    • ページ数 : 5ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    資料の原本内容

    ソーシャルワークにおける「自己覚知」とは何か、また「なぜ自己覚知は必要なのか」考察しなさい
     ソーシャルワークにおける自己覚知とは、

    援助者が自らの考え方を認識することである。なぜ、この自己覚知が必要かというと、自己覚知により、個人的な考え方に捕われて援助を押しつけていないか見つめ、援助における押し付けを防止するためである。これら、「自己覚知」とはなにか、「なぜ自己覚知は必要なのか」について詳しく考察していきたい。

     まず自己覚知から述べる。人間には個別性というものがある。性格、思想、信条、宗教観、好み、価値観等、これらをまとめて『考え方』とすると、考え方は人それぞれ違い千差万別である。例をあげると、自分の信じる宗教と対立する宗教を信じる人は嫌う。ある国籍の人は好きだが、ある国籍の人は嫌い。障害者に対する偏見の強い人もいれば、弱い人もいる。喫煙者を嫌う人もいれば、嫌わない人もいるだろう。また、援助者も組織に所属するわけであるから、その所属する組織の思想や利益を誘導する方向に考え方の影響を受けやすい。そのため、援助者は個人的な考え方の影響を受けて、ソーシャルワークにおいても、その個人的な考え方を押し付けてしまう事がある。援助者には本来、その様な偏見や個人的考えを排除すべきであるが、人間である以上、まったくそれらに捕われないという事は不可能といえる。ソーシャルワークにおける自己覚知とは、自らの考え方を認識することであり、援助において、自分自身の考え方を押し付けていないかを認識することであるともいえる。

     ではなぜ自己覚知が必要なのであろう。それにはまずノーマライゼーションという概念について説明したい。これは障害者と健常者は区別されることなく、障害者も社会でノーマルに生活するのが本来は望ましいという概念であり、現在の福祉における重要な基本概念の一つである。そのノーマライゼーションを実現するには、利用者自身の自己決定が重要である。なぜならば、ノーマルな人は、施設等から生活を押し付けられておらず、自分で考え決定するという自己決定を当たり前に行っているからである。

     ここで、援助者と利用者の関係を考えたい。本来は援助者と利用者は対等でなければならない。しかし、援助者と利用者には、援助する側と援助される側という関係性があり、また社会の福祉資源に関する知識が多彩である側と乏しい側という関係性もある。また、利用者の中には認知症疾患者、精神障害者、知的障害者といった自己主張の苦手な人びとも多い。よって、援助者と利用者は対等な関係ではなく、援助者優位になりやすい。そのため、利用者は援助者の考え方を押し付けられやすい立場にいるのであり、ノーマライゼーションにおいて重要な自己決定を疎外されやすいのである。

     ゆえに、援助者は利用者の自己決定を十分に尊重し、援助者の考え方を押し付けないという点に、十分な留意をしなければいけない。しかし、悪意を持って意識的に考えを押し付けるのは論外としても、無意識的にも個人的な考え方に捕われ、利用者へ自分の考えを押し付けてしまうことがある。

     だが、その無意識を、自己覚知により、意識下に曝すことができれば、自らの考え方の傾向を知ることができる様になるだろう。その傾向を知ることができれば、個人的な考え方を押し付けていないかを見つめ、それを防止する事も出来るのである。

    以上、自己覚知により、援助者が自分の考え方の癖や傾向を学び、自らを見つめ、援助者の考え方を押し付けることを防止する。これが、なぜ自己覚知が必要かという理由であると考察したい。
    【参考文献名】

    1) 精神保健福祉士養成セミナー編集委員会編『精神保健福祉援助技術総論』<増補改訂第3版精神保健福祉士養成セミナー第13巻>,へるす出版,20 08年。

    2)新・社会福祉士養成講座編集委員会編『相談援助の基盤と専門職』<新・社会福祉士養成講座第6巻>,中央法規,20 09年。

    3)空閑浩人編著『ソーシャルワーク入門―

    相談援助の基盤と専門職』,ミネルヴァ書房,

    20 09年。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。