第97回薬剤師国家試験275問 解説

閲覧数5,603
ダウンロード数3
履歴確認

    • ページ数 : 4ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    前提知識【第99回薬剤師国家試験173問 解説】参照

    資料の原本内容

    第 97 回薬剤師国家試験 問題 275

    65 歳男性。甲状腺機能亢進症の治療を受けている。心房細動による頻脈のため、
    ジゴキシンによる治療が開始された。

    この患者におけるジゴキシンの全身クリアランスは 4.0L/hr、経口投与時のバイオアベイ
    ラビリティーは 80%である。定常状態平均血中濃度を 1.0ng/mL に維持するための 1 日当
    たりの経口投与量(mg/day)はいくらか。1つ選べ。
    1 0.004

    2 0.032

    3

    0.096

    4

    0.120

    5 0.250

    不整脈治療に使われるこのジゴキシンは、有用な医薬品であることは間違い
    ないけど、治療域が狭くて(0.5~2.0ng/ml)、治療薬物モニタリング(TDM)
    が必要なことでかなり有名だね。
    少し飲み過ぎると副作用が出ちゃうし、少し足らないだけで不整脈を抑える
    効き目がなくなっちゃう、とてもシビアな薬だね。
    また、ジゴキシンはほとんどが腎臓で排泄されるため、腎機能障害のある患
    者さんでは、体にジゴキシンが残ってしまい、血中濃度が上がって副作用が出
    やすくなる。
    さらにさらに、甲状腺機能が亢進しているとジゴキシンの代謝・排泄が早ま
    って予想外に血中濃度が下がってしまうし、甲状腺機能が低下していると、腎
    機能障害の時と同じで体にジゴキシンが残ってしまい、予想外に血中濃度が高
    まってしまう。
    要するに、いろんな要因で血中濃度がガラッと変わってしまう。患者さん一
    人ひとりで適切な量がわかりにくいから TDM で確認しなきゃいけないってこ
    とだね。

    効き目は良くても、この扱いづらさは大変だよね!

    1

    第 97 回薬剤師国家試験 問題 275

    さて、今回の問題を解く前に、
    前提知識
    第 99 回薬剤師国家試験 173 問 解説

    をダウンロードし、必ず勉強しておいてくれ。これ以降は、前提知識がある
    ものとして解説を続けていくのでよろしくね。
    さて、僕たちは前提知識として『平均血中濃度 Css』を学んだのであったね。
    <急速静注・反復投与>

    <経口・反復投与>

    定常状態の平均血中濃度 Css

    定常状態の平均血中濃度 Css

    Css=

    D

    Css=

    kel・Vd・τ

    F・D
    kel・Vd・τ

    また、それ以外にも重要な公式として『トータルクリアランスの公式』があ
    ったね。
    トータルクリアランスの公式

    CLtotal=kel・Vd

    この公式は右辺から左辺へ逆に見ることで、
    隠れた CLtotal を見つけ出す“架け橋”になると
    僕は予言したのだった。

    今回の問題はまさにこの『トータルクリアランスの公式』を使って考えてゆ
    く問題だ。トータルクリアランスというパラメーターが、いかに他の公式と繋
    がっているかということを味わいながら解いて欲しい。

    【解答】
    定常状態の平均血中濃度は以下のように書ける。
    Css=

    F・D
    kel・Vd・τ

    また、CLtotal=kel・Vd を用いて以下のように書き直せる。
    超重要!“架け橋”の変換!

    2

    第 97 回薬剤師国家試験 問題 275

    F・D

    Css=

    ・・・①

    CLtotal・ τ

    今知りたいのは、1 日あたりの投与量、すなわち

    τ (day)

    D (mg)

    D

    τ

    (mg/day) である。

    よってさらに式を変形すると、
    D

    τ
    問題文より、



    Css ・CLtotal

    ・・・② となる。

    F

    CLtotal=4.0L/hr
    F=0.8

    これらを②に代入すると、

    Css=1.0ng/mL
    5

    D

    τ



    1.0ng/mL ・4.0L/hr
    0.8 1

    = 1.0ng/mL・5L/hr



    1.0ng
    mL



    5L

    単位の計算はただの文字式!!

    hr

    計算しやすいように、はっきりと
    分数表示しよう!



    1.0ng
    mL



    5×103mL
    hr

    単位の変換は OK かな?
    m(ミリ)=10-3
    μ(マイクロ)=10-6
    n(ナノ)=10-9



    5×103ng
    hr

    m(ミリ)

    L=103×10-3 L
    =103×mL
    3

    第 97 回薬剤師国家試験 問題 275

    今求めたい単位は

    mg/day なので、

    n(ナノ)=10-9
    =10-6×10-3



    5×103×10-6mg×24

    =10-6m(ミリ)

    24hr
    day







    5×103×10-6mg×24
    day
    120×10-3mg
    day
    0.120mg
    day

    よって、条件を満たす 1 日当たりの経口投与量は、0.120mg/day

    なるべく途中の計算を省かずに書いてるけど、どうかな?
    問題そのものは代入で終わっちゃうけど、単位の換算はなかなか難しいね。
    特に、求めたい形の単位に揃えるために(hr→day にするために)、24 を分母分
    子に掛けるのはなかなか思いつかないね。
    単位の換算はあくまでも機械的に、文字式として扱うことで無駄に悩まなく
    なるよ。L から mL へ、n(ナノ)から m(ミリ)への変換でも、10-3 を m(ミリ)に書
    きなおすなどの機械的な作業が、混乱をなくすポイントだ。
    それではまた、別の問題の解説で会いましょう。
    僕の勤務してる小児科の薬局でも、インフルエンザが流行っているのでみん
    な気をつけて!もうすぐ国家試験本番だからね!
    //
    作成日

    2014 年 12 月 23 日

    4

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。