ジョセフ・フレッチャーの「状況倫理」の長所とその問題点
倫理的一般原則が、様々な文化的価値観や歴史的文脈を無視したかたちで設定される時に、それは人を束縛するだけの命令となる。「愛と律法は矛盾する」などという言い回しで表現されるときの律法はそれに近い。フレッチャーの状況倫理は、愛の原則によって世界を相対的に捉えて決断を下していくため、現実世界の人々の価値観や方法論、歴史などが無視されることはない。現代のように価値観が多用し、急速に変化する歴史状況の中では通り一辺倒の原理原則では対応できない状況に遭遇することも少なくない。そこにおいて、フレッチャーの状況倫理の用いられる意義があるであろう。
しかし...