国際語としての英語―歴史的背景による考察―

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    資料紹介

    国際語としての英語を歴史的な側面からまとめています。イギリスで使われていた言葉が、アメリカ大陸に渡り、その後アフリカやアジア圏に広がった経緯について、文献をもとに考察してます。

    資料の原本内容

    国際語としての英語―歴史的背景による考察―
    Introduction
     英語は、世界で使用される頻度が高い言語の一つである。そのため、英語は国際語と言ったり、英語は世界語と言われたりすることがしばしばある。これは言語帝国主義の問題が絡んでいると考えることができるであろう。このような背景をもとに、国際語としての地位になった歴史や、今後英語の方向性を考えたい。
    I. なぜ英語が広く普及したかのか
     ここでは、今日のようになぜ英語が世界中で普及したのかをまとめたいと思う。これらのことが、英語が国際語になった歴史的な背景に直接つながるからである。
    1.英語の進出及び侵略について
     中村(1995)によれば、英語の歴史を社会的な観点から考えると、5つの段階に区別することができる。表1は、英語の各時代の特徴をまとめたものである。
      期 間 それぞれの時期の特徴 第1期 1350~1600 [英語が]イングランドの「公用語」(国家語)となる時期 第2期 1600~1800 海外に大々的に進出する時期 第3期 1800~1900 帝国主義的性格を発揮する時期 第4期 1900~1945 フランス語に代わって「世界語」「(世界の)共通語」の地位を確立する時期 第5期 1945~ 「共通語」的性格と新・植民地主義的性格を押し進める時期  表1:英語の各時代の特徴 【中村(1995)をもとに作成】
     
     第1期は、イングランドがノルマン支配から解放され、独立国家(近代国家)となる時期ある。この時期は、フランスとの百年戦争(1337~1453)が勃発し、近代国家にふさわしい語として英語を自分たちの相応しい言語として考える必要があった。
     第2期は、海外貿易が盛んになった時期で、イングランドの富の蓄積が進んだ時期である。第1期中期からイングランドでは、人口が増加し、生活水準が低下した。そのため、自国の経済問題と人口問題を解決するために、人々の海外進出とともに、英語の海外進出が頻繁に行われていた時期である。
     第3期は、産業革命(生産と技術)と教育の時代であった。イングランドの義務教育制度が施行され、英語が教育用語となった。
     第4期は、アメリカが既に強大国になり、帝国間の争いが激しくなった時期である。英語はアメリカの登場で、その地位が確立し、それ以前はフランス語のみで書かれいた国際条約が1919年の「ベルサイユ条約」では、フランス語と英語で書かれた。
     第5期は、第二次世界大戦後などということもあり、現在につながる政治や経済の流れができてきた時期である。
    2.英語の海外進出について
     I-1で述べたとおり、1600年代前後からイングランドの海外貿易が盛んになってきた時期である。クリスタル(1998: 40)によれば、この時期には、植民地も多く持っていた。歴史的に英語の歩いた道をたどると、はじめは南北アメリカである。以下は、英語が各大陸の植民地にどのように影響を及ぼしたか、を簡単にまとめたものである。(Cf. クリスタル: 1998: 40-73)
    (1)アメリカ大陸
    アメリカ大陸に、イングランドから最初に来た探検家は、1584年のウォルター・ローリーであるが、失敗に終わっている。探検者のあるグループはロアノーク島(現在の北カロライナ州)に上陸して、小さいながらも植民地を設けた。そして、1607年に探検家がチェサピーク湾に最初の恒久的な植民地を作った。その時に、植民者は自分たちの地域社会をジェイムス1世にちなみ、「ジェームスタウン」、その地域全体をエリザベス処女王にちなみ「ヴァージニア」と名付けた。その後1610年には、イギリス非国教会の信徒35名がメインフラワー号になりこみ、一般植民者67名と一緒にヴァージニアを目指した。しかし、悪天候だったために、ヴァージニアへの上陸をあきらめケープコッド湾に到達し、現在のマサチューセッツ州プリマスに植民地を設けた。この植民地は成功し、1640年までに、約2万5千人の移民がこの土地に到来した。
     17世紀には新しい移民がアメリカに到来し、色々な言語的背景も流れてきた。
    また、18世紀には、北アイルランドからの移民が大量にやってきた。1776年にアメリカは独立宣言をするが、当時の植民者の7分の1はアイルランド人であったと言われている。
    (2)カリブ海地域
     アメリカ植民史の初期は、英語は南方向に向い広がったりもしていた。西インド諸島やアメリカ大陸の南部では黒人奴隷が流入し、独特の英語が話されるようになった。
     17世紀初期にヨーロッパ船がアフリカ西海岸に向うことから、奴隷貿易が始まったとされている。南北戦争が終わった1965年には、アメリカにおける個人ドレは400万人を超えていた。その結果、黒人が話す英語がクリオール英語として生まれた。
    (3)オーストラリア
     18世紀末にまで、イギリスによる世界探索は続いた。1770年に、ジェームス・クックが最初にオーストラリアを到達し、20年以内にシドニーに懲治植民地を創ることを目標にした。13万人以上の囚人が1778年に到着し、50年間このようなことが続いた。
    (4)南アジア
     英語話者の数では、世界第3位であるインド亜大陸であり、現在も約5%程度が日常的に英語を使用していると思われる。この地域で話される英語は、「南アジア英語」と呼ばれ、起源はイギリスである。イギリスが初めてインドと関わったのは、1600年の東インド会社設立である。エリザベス女王1世は、交易上の独占権を与え、スラトに最初の交流拠点を作り、その後、マドラス、ボンベイ、カルカッタに拠点が広がっていった。1858年にインド反乱事件が勃発し、のちに英国主権に入った。1765年から1947年の独立に至る間に、亜大陸全体を通じ、英語は行政や教育の用語として徐々に広がっていった。インドでは多くの州で、今日も英語を準公用語とされている。
    (5)旧アフリカ植民地
     15世紀末には、イギリス人が西アフリカを訪れていたという。ほどなくして、英語が沿岸地域の居住地で使用されるようになった。19世紀には商業活動と反奴隷交易活動が増えたために、西アフリカ沿岸全地域に英語をもたらした。地域の言葉が多い地域なので、英語を基礎とそるクリオール語やピジン語がいくつも生まれるが、植民地官僚や貿易業者などが使う何種類かの標準英語が、一緒に存在するようになる。イギリス流の英語の変種の5カ国で発展し、それぞれの国で、今公的な資格を英語に与えている。
    (6)東南アジアと南太平洋
     これらの地域は、アメリカ英語とイギリス英語の両方が使われている地域である。1898年の米西戦争の結果、アメリカはグアム島とフィリピンの主権を手に入れた。1946年にフィリピンは独立をしたが、アメリカ英語の影響は残っている。
     それに対して、イギリスの影響は、1770年代のクック船長の航海が知られている。東インド会社の幹部より、ペナン(1786年)、シンガポール(1819年)、マラッカ(1824年)などに東インド会社のセンターが作られた。1867年に、マレー連邦が英国領植民地になるころには、英語は司法や行政の用語としてだけではなく、その他の分野にまでも広がっていった。その後も1898には、香港が99年の約束で植民地化された。
    II. 世界の流れにおける英語
     IIで述べたように、イギリスを中心とした植民地支配により、数世紀にかけて英語が各地域に広がったことがわかるだろう。これは、19世紀末にピークを向えたイギリスの植民地支配力の増大である。もう一つは、20世紀最大の経済大国になったアメリカの存在である。今でも、英語の国際語化に関しては、アメリカが経済大国になったという背景がある。
     世界で、英語を母語とする話者の7割がアメリカ人であり、その政治的や経済的なことも含めると、やはり英語いう言葉に決定的な動向を持つのはアメリカ人であろう。アメリカが経済大国になった背景には、イギリスの産業革命が下火になり、イギリスの経済成長をより早い国としてアメリカに譲り、大量生産方式の石油精製などの経済効果が原因の一つである。
     フィリプソン(2000)によれば、「多国籍企業が増えることで、多国籍企業はより世界中で行われる教育の内容に対して影響力を強めている」と述べている。そこには、英語が拡大する背景にある社会的や経済的な要因について、旧植民地が世界経済に参加するためには英語というツールを使う、と述べている。(三浦 信孝他: 2000: 100-101)
    III. 国際語としての英語
     IIで述べたように、イングランド中心の植民地支配から始まったことが、特にアメリカ合衆国の発展という歴史の中で大経済や政治に大きな影響を及ぼしている。このように、歴史的な背景を整理することにより、国際語としての役割を英語で補っているということが証明でき、英語が国際語として使われる背景理解につながるだろう。
     国際語というと、「世界中で英語が使える」という錯覚を持つかもしれないが、英語という同じ言語でも色々な種類があることを忘れてはならない。これらも英語の一部であるからだ。このことを考えると、日本人が英語を学ぶ場合にも励みになるだろう。これが、大英帝国として、世界に植民地を拡大させたことが、今日でもさえも残っているということには、少々驚くが、それ事実なのだろう。
    IV. まとめ
     このレポートでは、国際語としての英語についてまとめた。英語が国際語になった背景には、大きな歴史的な意味もあることがわかった。
    私たちは、「なぜ英語が今のような重要な言...

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