参考文献なし
★ 基礎現代化学シケプリ★ written by かずきち。
§6.分子の形成(第6回)
今回は基本的に主な有機化合物を例にして混成軌道を説明していきます。
また§5の補足として、
「結合性軌道はエネルギーの低いほうの軌道が主成分になり、反結
合軌道はエネルギーの高いほうの軌道が主成分になる」ということを加える。このことか
ら、第5回のレジュメの最後にあるフッ化水素の軌道の混合割合が理解できると思う。
(a)まず混成軌道の考え方は伝統的な化学結合論に分子軌道法の要素を加味したものであ
り、両者の折衷的なものであるということを留意してもらいたい。上のメタンの例を考え
た場合、炭素原子中の最外殻電子の軌道は 2s、2p であることは絵を見てもらえば一目瞭然。
ここでメタンは炭素と水素の間に4つの等価な結合を作るはずである。しかし実際には 2s
と 2p の軌道のエネルギー準位は異なっていて、等価な結合が4つ作ることができない。そ
こで、s 軌道と p 軌道を混ぜて、4つの等価な軌道である sp3 混成軌道を作るのである。そ
うすると炭素と水素間の4つの結合はすべて等価なものとなる。
レジュメ中に書いてある sp2 混成軌道と sp 混成軌道も同様に考えられるので省く。わか
らなければ、実際に手で書いてみて♪
(b)炭素間の二重結合と単結合が交互に描かれている系をπ電子共役系と呼ぶ。二重結合と
単結合が交互に依存する系を共役系(conjugated system)と言う。共役系中の二重結合は共
役二重結合(conjugated double bond)という。上の図のようなとき、p 軌道の重なりを通し
て電子は炭素原子間を広く動くことができる。このように共役系はπ電子が共役系全体に
広く動き回っている特徴がある。このことをπ電子の非局在化(delocalization)という。
π電子が非局在化するために炭素間結合の距離にある特徴が見られる。共役系の単結合は
少し二重結合の性格を帯びるので、普通の単結合より結合距離が短くなり、また共役系の
二重結合はやや単結合の性格を帯びるので普通の二重結合より結合距離が長めになってい
る。したがって、共役系の炭素間結合を「1.5重結合的性格」をもつといえる。(1.5
である理由は当然、(1+2)÷2=1.5だから(笑))またπ電子共役系亜はπ電子が
非局在化する結果、特徴ある炭素間結合距離を示すだけでなく、特別な安定性も示す。こ
の安定化には非常に重要なものであり、安定化エネルギーを非局在化エネルギー(共鳴エ
ネルギー)と呼ぶ。