基礎現代化学シケプリ1

閲覧数1,151
ダウンロード数0
履歴確認

    • ページ数 : 7ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    タグ

    資料の原本内容

    ★ 基礎現代化学シケプリ★ written by かずきち。
    §1.原子の構造(第1回)
    はじめに、この講義である基礎現代化学とは量子化学を取り扱っている。量子化学とは量
    子力学の化学への応用を指す。このシケプリで量子化学がわかってもらえれば幸いです。

    (a)わかりやすく言うと、「原子には電子がその状態に応じて入る部屋のようなものが存在
    する」ということです。この部屋を電子軌道(electron orbit)と言う。電子軌道にはい
    くつかのタイプがあり、タイプによって部屋の形、つまり、電子が動く領域が異なる。代
    表的な電子軌道である s 軌道、p 軌道、d 軌道はそれぞれ、s 軌道が球体の部屋、p 軌道が 3
    個でワンセットの鉄アレイの形の部屋、d 軌道が 5 個でワンセットの少し複雑な形をした部
    屋である。この電子軌道の正しい意義は後ほど明らかにする。この電子軌道の集まりとし
    て電子殻(electron shell)がある。電子殻は原子核に近いほうから K 殻、L 殻、M 殻と名前
    がついている。
    またここで、なぜ原子核の周囲に原子が周回軌道を行っていることが間違っているかと
    いう理由を説明する。もし仮に原子核の周りを電子が等速円運動をしていると仮定すれば、
    古典物理学に従って電子は電子波を放射して徐々にエネルギーを失っていき、その結果電
    子が電子殻に落ち込んでしまい最終的につぶれてしまうからである。

    (b)あらゆる物質には原子(atom)が集合してできている、原子には 100 種類ほどの種類が
    あって、その構造は種類によって細部が異なる。しかし大まかな構造はすべての原子に共
    通する。その共通部分とはその中央に原子核(atomic nucleus)があり、核の周りに電子(
    electron)が分布している構造である。そして、たいていの原子核は正電荷をもつ陽子
    (proton)と電荷をもたない中性子(neutron)からなっている。上の表から原子の質量を決定
    しているのは陽子と中性子ということになり、原子の大きさは原子核の構成で決まってい
    るのではなく、電子の存在領域によって決まっていることになる。

    (c)太陽系モデルに欠陥があることは(a)を参照のこと。

    (d)波長の異なる光を分離する操作を分光といい、分光をして得られた光の波長と強度の関
    係を表すグラフなどをスペクトル(spectrum)という。もし(a)で仮定したように、電子が太
    陽系モデルに従い円運動をすれば、水素原子から放射される電磁波のエネルギーはいろい
    ろな値を連続的にとるはずである。しかし実際の原子から放射される電磁波の波長は厳密
    に決まった特定の値しかとらず離散的なスペクトルになっているのである。なぜなら電子
    は波をまとって原子の周りに存在するからである。
    ボーアの前期量子論(old quantum theory)では基本的に以下のことを仮定しておく。①
    原子が長時間取ることのできる状態、すなわち定常状態(stationary state)、は特定のと
    びとびのエネルギー値に対応する状態のみに限られる。②2つの定常状態間を移り変わる、
    つまり遷移(transition)するときに吸収もしくは放出される電磁波は、その振動数νが一
    定であり、その値は次の関係式 E”-E’=hνによって与えられる。ただし h はプランク定数
    (planck’s constant)と呼ばれる定数で、E”、E’は遷移に関わる2状態のエネルギー値
    である。

    つまり形が一定時間安定に存続しうるような状態(定常状態)は、特定のとびとびのエ
    ネルギー値 E(1)、E(2)、E(3)…に対応するものだけに限られ好き勝手なエネルギー値で定
    常状態を取ることはできない。さらに、ある一つの定常状態 i から別に定常状態 j へ遷移
    するときは E(i)-E(j)=hνの関係にある振動数νの電磁波を放出または吸収することにな
    る。
    なお、エネルギー値がとびとびの離散的な値しか許されない場合、その部質量は量子化
    (quantization)されていると表現する。そして、とびとびのエネルギー値をエネルギー順
    位(energy level)という。
    どのようなエネルギー値において定常状態を取れるのかという疑問に対して、ボーアは水
    素原子の電子状態に対し、電子の運動量と円周の長さの積がプランク定数 h の整数倍にな
    るという量子条件(quantum condition)が満たされている場合にのみ定常状態を取れる考え
    た。

    (e)離散スペクトルの例として、水素原子の発光スペクトル(emission spectrum)がある。
    水素原子に高電圧を加え放電させると、水素ガスが赤紫色の光を放つ現象が見られる。こ
    の場合に放射された電磁波はいくらかの系列に分類することができ、その系列を発見者の
    名前をとってライマン系列(Lyman series)、バルマー系列(Balmer series)、パッシェン系
    列(Paschen series)と言う。
    こ う 言 っ た 現 象 を 検 討 す る と 1/ λ =R ( 1/m^2-1/n^2 ) と い う リ ュ ー ド ベ リ の 公 式
    (Rydberg’s foemula)が成立することがわかった。R はリュードベリ定数(Rydberg’s
    constant)

    はそのリュードベリの公式の一例である。
    ちなみに M=1 がライマン系列、M=2 がバルマー系列、M=3 がパッシェン系列である。

    (f)この2つは電子が波動性を持つ事を実験から得た例である。

    (g)ド・ブロイは波動性と粒子性をあわせもつ光について二重性(duality)がそれまで単な
    る粒子であると考えられていた電子にもあてはまるのではないかと考えた。張られた弦や
    管内の空気のように有限の範囲内に局在する波は定常波(stationary wave)をつくり、その
    とき振動数はν(1)、ν(2)、ν(3)…のように特定のとびとびの値をとることはよく知られ
    た事実である。物質に二重性があり、原子内のような限られた空間内を運動する電子など
    の物質波もこのような定常波をつくると想像すると、E=hνの関係にあるエネルギー値もと
    びとびになってエネルギーの量子化が導くことができそうである。前期量子論においてボ
    ーアが量子条件を課すことで導いた軌道半径やエネルギーの量子化をこのような定常波の
    考え方から導こうとしたのがド・ブロイの考えであった。
    http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~ft92043/kougi/qm/densa/new_image/botan2.gif の 動 画

    を見てくれるとよくわかるはず。
    物質波の存在を想定して考えを進めていく場合、この物質波の振る舞いを一般的にしる
    ためにはその波の伝わり方、つまりその波が従うべき波動方程式(wave equation)がわかっ
    ている必要がある。それを求めるのが§2である。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。