日本の精神科医療が欧米諸国と大きく異なっていた歴史的経過。
・ライシャワー事件
・宇都宮病院事件
・社会防衛思想
・法制史の概略
・引用文献表示あり
・補足資料つき
(課題)
日本の精神科医療が欧米諸国と大きく異なっていた歴史的経過について
Ⅰ.問題設定
我が国の精神科医療は、精神保健法が施行されるまでは、障害者の治療を重視していた欧米諸国のそ
れと大きく異なり、隔離的な入院措置が重視されていた。では、この歴史的経過はどのようなもの
だったのだろうか。
Ⅱ.ライシャワー事件以前
1)18 世紀までは日本、欧米を問わず、精神障害に対する理解と研究が進まない状況にあったが、欧
米ではフランス革命期に Ph.ピネルが心理的療法を提唱し、「鉄鎖からの解放」と標榜される精神障害
の治療という概念が登場した。以降、S.フロイト、E.クレペリン、E.ブロイラーの登場により、現代精神
医学が基礎付けられた。
2)同時期の我が国においては、精神障害者を家庭内の座敷牢へ隔離することが主たる対応であった
が、精神病を患う旧中村藩藩主相馬誠胤の監禁をめぐる相馬事件を契機に精神病者監護法が制定され
た(1900 年)。しかし、同法は、社会防衛思想から私宅監置を合法化するにとどまり、精神障害者の
処遇や治療への配慮を欠いた内容であったため、欧米の状況を知る呉秀三らの「精神病者...