2011年度課題レポート・民法1(総則)のものです。
題:時効の援用の法的性格
序
時効の効果が生じるためには、時効の援用が必要である(145条)。時効の援用とは、時効の利益を受ける者による時効の利益を受けようとする意思表示をいう(1)。
そこで本稿では、まず時効の援用の法的性質につき述べ、次に時効の援用権者について記し、最後に時効援用の方法につき叙す。
第一章:時効の法的性質
ここで、民法は一方で当事者による援用がなければ裁判所は取り上げることができないとしながら(145条)、他方で、時効期間の経過により権利の得喪の効果が生じると規定しており(162条及び167条)、両者の関係を如何に説明するかが明らかでない。そのため、時効の援用の法的な性質を如何に考えるべきか。
まず、従来の多数説である確定効果説・攻撃防御方法説からは、162条又は167条等の権利の取得・消滅という文言を重視すべきであるとの理由から、時効の完成によって権利の得喪が実体法上確定的に生ずるが、訴訟で取り上げてもらうためには訴訟上これを主張する必要があり、援用は訴訟上の攻撃防御方法に過ぎないとする(2)。
しかし、本説によれば実体関...