【無料公開】中央大学通信教育部法学部「民法4(債権各論)」合格レポート2010年第1課題第2課題第3課題第4課題セット

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    第1課題
    所有権留保売買、他人の物の売買および二重売買の諸ケースにつき、生ずるであろう危険負担(民法534条以下)の問題とその解決を論じなさい。
    第2課題
     付随的債務の不履行を理由に契約を解除することが出来るかどうか論じなさい。
    第3課題
     建築請負契約において完成した建物の所有権は、完成時において注文者・請負人のいずれに帰属するかを論じなさい。
    第4課題
     錯誤によって和解の効力はいかなる影響を受けるのかを論じなさい。 第1課題
    1.危険負担の問題とは、双務契約において、各債務が完全に履行される前に、一方の債務が債務者の責めに帰することが出来ない事由によって履行不能となり消滅した場合に、他方の債務もまた消滅するかという問題をいう。
    危険負担の問題において、他方の債務もまた消滅するとする立法主義を債務者主義といい、他方の債務は存続するという立法主義を債権者主義という。
     民法は536条1項において債務者主義を原則としている。これは、双務契約における存続上の牽連性を認める必要があるからである。
     例外として、以下の場合は、債権者主義が適用される。①特定物に関する物件の設定又は移転を目的とする双務契約(534条1項)、②不特定物に関する契約における特定後(534条2項)、③債権者の責めに帰すべき事由による目的物の滅失の場合(536条2項)、である。
    それでは、例外として債権者主義が適用される理由はなぜであろうか。
    第一に、利益の存するところに損失も帰するというローマ法以来の原則によるといわれる。つまり、目的物の価格上昇により利益を享受するのは買主であるから、価格の減少による損失も買主が負担するのが公平であるとする。しかし、目的物が滅失してしまうと、価格が再び上昇することはないから、その負担までも買主に負担させることは不公平であるとの批判がある。
    第二に、所有者は危険を負担すべきであるという理由もある。特定物売買契約においては、特約がないかぎり、契約の締結時に所有権は買主に移転すると考えられているから、危険も買主が負担すべきということである。しかし、所有者だから危険を負担しなければならない理由が必ずしも明らかでないし、所有権の移転時期についても代金支払・目的物の引渡等の時に所有権が移転するという説もあることを看過しているという批判がある。
     債権者主義には以上のような問題があるため、これを制限すべきという説もある。これは、そもそも双務契約においては存続上の牽連性を認めるのが公平であることから、債権者主義を制限し、買主が目的物について支配を収めたと認められるときから適用すべきだとする。たとえば、目的物の引渡、登記、代金支払のいずれかが生じたときに、はじめて危険が買主に移転することとなる。
     しかしながら、危険負担の規定は任意規定であるため、そのような制限を加えなくても、特約や契約の解釈により、債権者主義の適用を排除して妥当性を確保できる。よって、534条を文言通り適用すべきと考える。
    2.所有権留保とは、売主が売買代金を担保するため、代金が完済されるまで引渡しの終えた目的物の所有権を留保する制度である。
    所有権留保の法的構成には所有権的構成(最判昭49・7・18民集28巻5号743頁)と担保権的構成がある。前者は、代金完済を停止条件として目的物の所有権が移転され、それまでは所有権は売主に帰属するとし、後者は、目的物の所有権は買主に移転し、売主は代金を被担保債権とした担保権的地位を有するとする。所有権留保の実質は担保権であるから、担保的構成が適切と考える。
    それでは、所有権留保売買において、目的物が特定物であった場合、目的物の所有権は売主に留保されているにも関わらず、その滅失又は損傷の危険は買主が負担しなければならないのであろうか。
    所有権留保の法的構成は担保的構成と解されるところ、買主は目的物の所有権を有しているから、債権者主義を適用すべきである。そして、具体的妥当性は、特約や契約の解釈により確保されるべきである。
    3.他人物売買において、他人物が特定物であった場合、その目的物の滅失又は損傷の際に債権者主義が適用されるのであろうか。この点、買主が所有権を取得し得るか否かは未確定であるから、買主に利益あるいは支配が帰属するかは未定であるから、債権者主義を適用する前提を欠いており、債務者主義を適用すべきである。ただし、売主が他人物について所有権を既に取得していた場合は、通常の売買と同じく債権者主義が適用されると解す。
    4.二重売買において、買主がともに代金を支払っておらず、どちらにも所有権が確定されていない場合、債権者主義が適用されて、両者とも代金を払わなければならないのであろうか。これも他人物売買と同様に、いずれの買主に利益あるいは支配が帰属するかは未定であるから、債権者主義を適用する前提を欠いており、債務者主義を適用すべきである。
    内田貴、『民法 (2) 債権各論 』、東京大学出版会、1997
    遠藤浩(外5名)、『民法〈5〉契約総論』、有斐閣、1996
    第2課題
    1.契約の解除とは、契約が締結された後に、その一方の当事者の意思表示によって、その契約がはじめから存在しなかったのと同様の状態に戻す効果を生じさせる制度のことをいう。
     解除には、約定解除と法定解除の2種類がある(民法540条)。約定解除は、当事者相互の契約によって、解除権をあらかじめ留保しておき、その行使としてなされるものをいう。例えば、解約手付(557条)等がある。法定解除は、当事者の一方がその債務を履行しない場合に、相手方を救済する手段として、法律上当然に認められているものをいう。例えば、履行遅滞、履行不能、不完全履行といった債務不履行があった場合に契約の解除が認められ(民法541条~543条)たり、瑕疵担保責任(570条、566条)の効果として契約の解除が認められたりする。そして、解除の機能は、双務契約における拘束から債権者を保護することにある。
    2.付随的債務とは、ある種の債務において、その本体的給付のほかにこれに付随的に伴うものと認められる債務者の一定の義務であって、それに基づいて一定の効果が生ずる債務のことである。たとえば、売買契約における目的物の給付債務や代金の支払い債務を本体的給付債務といい、情報を提供したり、目的物を包装したりする債務を付随的債務という。
    それでは、付随的債務の不履行を理由に、契約を解除することが認められるのであろうか。
     この点について、判例(最判昭36・11・21民集15巻10号2507頁)は、解除制度が認められるのは、契約の要素をなす債務の履行がないために、契約目的を達成できない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない付随的義務の履行を怠ったにすぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないとする。
     一方、以下のような場合には解除権が認められている。
    農地売買において、買主が知事の許可申請手続をしない場合には、買主は代金債務の履行を拒絶することができることとなり、売主は契約の目的を達し得ないから、買主の許可申請手続の慨怠を理由として解除が可能であるとする(最判昭42・4・6民集21巻3号53頁)。
    代金完済まで目的物である土地の上に工作物を築造しないとの約款は、売買契約締結の目的には必要不可欠なものではないが、売主にとつては代金の完全な支払の確保のために重要な意義をもつものであり、その約款の不履行が契約の目的の達成に重大な影響を与えるものであるから、約款の債務は要素たる債務であると認定して、その不履行を理由として売主は解除をなしうるとする(最判昭43・2・23民集22巻2号81頁)。
    山林の使用することの承諾を得るという債務は、売買の目的である立・倒木の引渡のために必要不可欠な債務であるから、その債務が売主の責に帰すべき事由により履行不能となった場合には、買主の解除が認められるとする(最判昭45・3・3 判時591 号60 頁)。
    Yが、ゴルフ場に会員用の高級リゾートホテルが建設されることを強調して会員の募集をし、Xがそのことを考慮してゴルフ場の正会員となる旨の入会契約を締結した事件において、Yがリゾートホテルを建設してXの利用に供することが、契約上の債務の重要な部分を構成するとし、Xがその債務の履行遅滞を理由として契約を解除することができるとした(最判平11・11・30金判1088号32頁)。
    以上からすると、付随的債務の不履行を理由に契約を解除することは、特段の事情がない限り、できないと解すべきである。もっとも、要素たる債務と付随的債務の区別は相対的であり、具体的な事情を参酌して判断しなければならない。契約上のある約款または義務が外見上付随的なものとされても、客観的に決定された当事者の合理的意思においては、それが重視され、契約締結の目的となっているような場合、あるいは契約の前提条件となっている場合には、要素たる債務であって、その不履行は契約解除の要件を満たすというべきである。
    安永正昭(他)、『不動産取引判例百選第3版』、有斐閣、2008
    第3課題
    1.建築請負契約において、新たな物が作り出されるとき、この新たな物の所有権は、誰にどのように帰属し、工事の完成や引渡しは、所有権の帰属・移転にとってどのような意味をもつのかが問題となる。
    まず、建物の引渡しを必要としない場合には、工事の完成時に、注文者に所有権が原始的に帰属する。
    一方、建物が完成したものの、仕事の完成には引渡...

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