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医療をめぐる法律問題について
従来の医療は、恩恵的・権威主義的色彩を帯びており、必ずしも患者の立場ではなかった。しかし、近年は、この点の反省の上に立ち、医師と患者の関係を権利義務に基づいた関係に変えていくことによって適切な医療を確立しようとする動きが顕著である。その具体的な表れとして、患者の自己決定権の承認や、医師の医療過誤責任を追及する訴訟の増加などがあげられる。憲法では、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しており、これを実現するうえで非常に重要なのが、適切な医療を受ける権利である。近年、医療の高度化、複雑化、分業化、産業化や、患者数の増大にともなう診療時間の短縮などを契機として、医療のゆがみや医師患者関係の希薄化が語られるようになるにつれて、これらの問題を解決するために、医療における患者の主体的地位を尊重することにより、適切な医療の実現を図る必要性が強調されることになった。このような方向性を表わしているのが「患者の自己決定権」や「説明を受けた上での同意」である。
患者の自己決定権とは、患者は医療の単なる客体ではなく、医療の実施に際して主体的な地位を認められ...