葵の上は、光源氏の最初の正妻でありながら、この長い物語の中で出てくる場面が非常に少ない。それは、この二人が夫婦でありながらよそよそしく、源氏の足も遠のいてしまっていたことと、葵上が早くに亡くなってしまったせいであろう。
左大臣という、時の最高権力者の父と、皇族出身である母との間にただ一人の姫として生まれた葵の上は、珠のように大切にかしずかれて育った。
源氏と葵の上が、夫婦なのによそよそしく、本心を隠して接するのは、子の育った環境ゆえ、おごり高ぶった気位を葵の上は持っていたからであった。源氏が、いかに帝の御愛子であろうとも、自分も宮腹の姫、同等の身分、育ちではないか、という気構えが初めからあった。さらに葵の上は源氏より四歳年長である。現時も確かに名前のとおり、光り輝くばかりの美しい容貌と才気を兼ね備えているが、葵の上もそれに負けない美貌と才気を持っているとしたら、夫である源氏が、あっちこっちで女を作って遊んでいることに嫉妬して恨み言を言うなんて、みっともなくてできないと思うのも当然である。
葵の上は、光源氏の最初の正妻でありながら、この長い物語の中で出てくる場面が非常に少ない。それは、この二人が夫婦でありながらよそよそしく、源氏の足も遠のいてしまっていたことと、葵上が早くに亡くなってしまったせいであろう。
左大臣という、時の最高権力者の父と、皇族出身である母との間にただ一人の姫として生まれた葵の上は、珠のように大切にかしずかれて育った。
源氏と葵の上が、夫婦なのによそよそしく、本心を隠して接するのは、子の育った環境ゆえ、おごり高ぶった気位を葵の上は持っていたからであった。源氏が、いかに帝の御愛子であろうとも、自分も宮腹の姫、同等の身分、育ちではないか、という気構えが初めからあった。さらに葵の上は源氏より四歳年長である。現時も確かに名前のとおり、光り輝くばかりの美しい容貌と才気を兼ね備えているが、葵の上もそれに負けない美貌と才気を持っているとしたら、夫である源氏が、あっちこっちで女を作って遊んでいることに嫉妬して恨み言を言うなんて、みっともなくてできないと思うのも当然である。
源氏は葵の上と結婚するときも、恋し、慕っていたのは藤壺の宮だったが、葵の上はそのことを知っ...