・課題
第1課題第1設題
テキスト中の短編小説「山姥の微笑」(大庭みな子)を読んで、作家と作品について、女性像に注目して論じなさい。
第2課題第1設題
テキスト中の短編小説「海の方の子」(山田詠美)を読んで、女性と子どもに注目して、作家と作品について論じなさい。
・講評
第1課題
大庭みな子の『山姥の微笑』について、作者と作品の両方に目配りして、きちんと丁寧に分析している点がすぐれています。その上で、ウーマンリブ運動の時代背景も理解しています。臨終の場面の主人公の「微笑」の複雑を、もう少し深く考えてみて下さい。
第2課題
山田詠美の『海の方の子』について、作者と作品の両方をバランス良く論じています。他の山田作品に描かれる女性像等を、きちんと読み進めてみて下さい。主人公 久美子の心情がより深く理解できますよ。
・参考文献(第1・第2課題両方)
『短編 女性文学 現代』今井泰子 薮 禎子 渡辺 澄子
おうふう 2007,9,20
第1課題第1設題
本論文は、大庭みな子とその作品「山姥の微笑」より女性像について論じることを目的とする。
そのためにまず、作品の背景にあると考えられる「ウーマンリブ運動」について簡単にまとめる。次に、それをふまえて大庭みな子と「山姥の微笑」が主張する女性像とは何であるかを推論し、明らかにする。
「山姥の微笑」とは、大庭みな子が1976年(昭和51)に発表した小説である。その内容は、昔話のような題名とは裏腹に、非常に現実的で心に訴えかけるものとなっている。この女性の心情を描いた作品と大庭が主張する女性像を明らかにするには、その背景と考えられる出来事にも注目することが必要だ。
「山姥の微笑」が発表された当時の女性に大きな影響を及ぼした「ウーマンリブ運動」をみてみよう。
「ウーマンリブ運動」とは、1960年代後半から70年代前半にかけて起きた女性解放運動である。
この運動が起きる以前の女性は、自分の感情や考えを表現する機会が少なく、自然とその意欲も奪われがちであった。そんな立場から、他者の手により「解放される」のではなく、個人として自己表現することでウーマンリブ運動は展開された。そ...