頸部の筋肉
●浅頸筋:浅頸筋は頸部の筋肉のうち、表層にある筋肉の総称。筋肉の一方が皮膚で停止している皮筋である。浅頸筋は、一般には広頸筋、胸鎖乳突筋が分類される。しかし、広義の浅頸筋と呼ぶ場合、舌骨筋群を総じて指す場合がある。
▲舌骨上筋群:舌骨上筋は頸部の筋肉で、舌骨に繋がる筋肉である舌骨筋のうち、舌骨を挟み上方に存在する筋肉の総称である。
舌骨上筋には顎二腹筋、茎突舌骨筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋が含まれる
○顎ニ腹筋
顎ニ腹筋は、頸部の浅層にある4つある舌骨上筋群の一つになる。
前腹と後腹から構成され、その間には腱(中間腱)が存在する。また、中間腱は線維性の滑車によって舌骨に固定されている。
・起始:前腹-二腹筋窩 下腹-側頭骨の乳突切痕
・停止:中間腱を介して舌骨の上部に停止
・神経:前腹-三叉神経第三枝の顎舌骨筋神経 後腹-顔面神経の顎ニ腹筋枝
・作用:舌骨を引き上げ、また舌骨を固定するときは下顎骨下顎骨を下方に引き咀嚼を助ける。
○茎突舌骨筋
茎突舌骨筋は、頚部の浅層にある4つある舌骨上筋群の一つになる。
・起始:側頭骨の茎状突起上外側部
・停止:舌骨の体および大角の基部(内・外の2部に分かれ、顎ニ腹筋の中間腱を挟む形になる)
・神経:顔面神経の茎突舌骨筋枝
・作用:舌骨を後上方に引く
○顎舌骨筋
顎舌骨筋は、頚部の浅層にある4つある舌骨上筋群の一つになる。
幅が広く、口腔底を構成している。
「船戸和弥のHP」では、顎舌骨筋は「頭部の筋」に分類されている。
・起始:下顎骨の顎舌骨筋線
・停止:舌骨体、顎舌骨筋縫線
・神経:顎舌骨筋神経(三叉神経の第3枝である下顎神経の枝)
・作用:舌骨を拳上する(下顎骨を固定した時) 下顎骨を引き下げる(舌骨を固定した時) 開口補助 口腔底を作る
○オトガイ舌骨筋
オトガイ舌骨筋は、頚部の浅層にある4つある舌骨上筋群の一つになる。
顎舌骨筋とオトガイ舌筋の間にある、短くて薄くい扁平な筋。
「船戸和弥のHP」では、顎舌骨筋は「頭部の筋」に分類されている。⇒「頭部の筋の一覧」
・起始:下顎骨のオトガイ舌骨筋棘
・停止:舌骨体の前面
・神経:舌下神経(XII)
・作用:舌骨を前上方に引く、口腔底を補強する
▲舌骨下筋群:舌骨下筋は頸部の筋肉のうち、舌骨に繋がる筋肉である舌骨筋のうち、舌骨を挟み下方に存在する筋肉の総称である。開口運動や嚥下運動の際に働く。
舌骨下筋には胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋(上腹・下腹)、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋が含まれる。
○胸骨舌骨筋
胸骨舌骨筋は、頸部の浅層にある4つある舌骨下筋群の一つになる。
頸部の中央に位置する扁平な幅の狭い筋。
胸骨柄から舌骨に縦に一直線に走る筋肉ですが、左右一対あります。この筋肉は、頚部を少し進展させて(顎を持ち上げて)、頚部の前部に力を入れると触診できます。
・起始:胸骨柄の後面と胸鎖関節・第一肋骨の軟骨部の後面に付着。
・停止:舌骨体の下縁
・神経:頸神経叢C1-C3の頸神経ワナ
・作用:喉頭と舌骨を押し下げる。舌骨を固定する。
○肩甲舌骨筋(上腹・下腹)
肩甲舌骨筋は、頸部の浅層にある4つある舌骨下筋群の一つになる。
胸骨舌骨筋と同じ層にある細い筋で、上腹と下腹の2つに分かれその間には中間腱が存在している。
・起始:下腹:上肩甲横靭帯 ・肩甲骨上縁 ・烏口突起
・停止:上腹:舌骨体下縁の外側部(胸骨舌骨筋の停止部の外側)
・神経:頸神経 ワナの上根C1〜C3
・作用:喉頭と舌骨を押し下げる。舌骨を固定する。中間腱が頚筋膜を張り緊張させ、内頸静脈を開く。
○胸骨甲状筋
胸骨甲状筋は、頸部の浅層にある4つある舌骨下筋群の一つになる。
胸骨舌骨筋のすぐ舌を平行して走っている扁平な筋で、胸骨舌骨筋よりも幅が広いく甲状腺を覆っている。
・起始:胸骨柄の後面、第1(ときに第2も)肋軟骨の後面
(胸骨舌骨筋の内側で、若干その下方から起こる)
・停止:甲状軟骨の斜線
・作用:甲状軟骨を下方に引く、喉頭と舌骨を押し下げる。
舌骨を固定する。
・神経:頸神経叢C1〜C3の頸神経ワナ
・作用:喉頭と舌骨を押し下げる。舌骨を固定する。
○甲状舌骨筋
甲状舌骨筋は、頸部の浅層にある4つある舌骨下筋群の一つになる。
胸骨舌骨筋の上方の外側部に平行に走っている筋である。
・起始:甲状軟骨の斜線(胸骨甲状筋の続きとして)
・停止:舌骨の舌骨体および大角の後面
・神経:頸神経ワナの甲状舌骨筋枝C1
○広頸筋
広頸筋は、頸部の浅層にある筋肉のうち舌骨上筋群でも舌骨下筋群でもない、2つある「その他」の筋のうちの1つである。
頸部の最表層にある幅の広い筋肉で、への字にして口の下の筋肉を緊張させると頸に縦の筋が浮かびあがるので、容易に確認することができる。皮膚とつながる皮筋の一つである。
・起始:第2肋軟骨と肩峰の間の胸郭上部
・停止:下顎骨下縁、下顎の皮膚
・神経:頸枝(顔面神経)
・作用:口角を下に引く。頸筋膜及び咬筋筋膜を緊張させる。
○胸鎖乳突筋
首の左右両側にあり、頭部を動かしたり呼吸を補助したりする筋肉
起始:胸骨頭(胸骨柄の上縁) 鎖骨頭(鎖骨内方の1/3)に付着
停止:側頭骨乳様突起・後頭骨上項線の外側部
神経:副神経および頚神経叢の筋枝C2〜C3
作用:両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す、片側が動けば顔面を対側に回す、呼吸の補助
●深頸筋:深頸筋は頸部の筋肉のうち、浅頸筋の下層にある筋肉の総称。深頸筋は後頸筋とも呼ばれ、頸椎の前面と側面を縦走しながら後頭骨から上位肋骨にかけて構成している筋群である。深頸筋に属する筋は、斜角筋群(前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋・最小斜角筋)椎前筋群(頸長筋・頭長筋・前頭直筋・外側頭直筋)である。
▲斜角筋群:深頸筋のうち、頚部脊柱の横突起から平行に走る細長い筋肉である。前斜角筋と中斜角筋、後斜角筋、最小斜角筋の4部に分けられる。
○前斜角筋
概要:部の筋肉のうち、頸堆の横突起から肋骨に伸びる筋肉である。繋がっている肋骨を上方に引く作用を持つ
起始:第3〜6頸椎横突起前結節
停止:第1肋骨の前斜角筋結節(リスフラン結節)
神経:頸神経叢と腕神経叢の直接枝C4〜C7
作用:肋骨を引き上げて胸郭を広げる(呼息)、肋骨を固定すれば頸椎を前方に傾け、片側だけでは同側へ曲げる。
○中斜角筋
斜角筋群のうち最前方を走っている筋肉となる。停止付近で前斜角筋と中斜角筋に三角形のすき間ができるが、これを斜角筋隙と言い、その間を鎖骨下動脈と腕神経叢が通っている。
起始:第2〜第7頸椎の横突起後結節
停止:第1肋骨の鎖骨下動脈溝の後方の隆起、時に第2、3肋骨
神経:頸神経叢と腕神経叢の直接枝C2〜C8
作用:肋骨を引き上げて胸郭を広げる(呼息)、肋骨を固定すれば頸椎を前方に傾け、片側だけでは同側へ曲げる。
○後斜角筋
後斜角筋は、頸部の深層にある深頸筋のうち、4つある斜角筋群の1つになる。
斜角筋群のうち最も小さく、最後側を斜めに走っている筋肉。
・起始:第4(5)〜第7頸椎の横突起の後結節
・停止:第2肋骨の外側面
・神経:腕神経叢の直接枝C5〜C8
○最小斜角筋
最小斜角筋は、頸部の深層にある深頚筋のうち、4つある斜角筋群の1つになる。
「ウィキペディア」には以下のような説明が見られる。
「頸堆の横突起から肋骨に伸びる筋肉である。前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋と平行し、一番後ろを走っている。強制吸気作用を持つ。 」
・起始:第7頸椎の横突起
・停止:第一肋骨及び胸膜
・神経:腕神経叢C5〜C8
・作用:第一肋骨を引き上げる。胸膜頂を緊張する。
▲椎前筋群:深頸筋のうち、頸部脊柱の前面に接して上下に走る細長い筋肉である。前頭直筋と頭長筋、頸長筋(斜角筋も含まれることもある)、外側頭直筋の4部に分けられる。頭部を側方へ傾けるが、呼吸補助筋としても機能する。
○頸長筋
頚長筋は、頚部の深層にある深頚筋のうち、頚椎および胸椎の前面に位置する4つある椎前筋群の1つになる。
頭長筋の内側にあり、以下の3部より構成されている。
垂直部・最内側に位置する、上斜部・外側の上部に位置する、下斜部・外側上部に位置する
・起始: 垂直部・第5〜第7頸椎および第1〜第3胸椎の椎体、上斜部・第3〜第5頸椎の横突起、下斜部下斜部・第1〜第3胸椎の椎体
・停止:垂直部・第2〜第4頚椎の椎体、上斜部・環椎の前結節、下斜部・第6および第7頸椎の横突起
・神経:頸神経叢及び腕神経叢の枝(C2〜C6)
・作用:両側が働くと頚椎を前方に屈し、一側が働くと、収縮した筋の側に頚椎を曲げる。頭部の前屈、側屈
○頭長筋
頭長筋は、頸部の深層にある深頸筋のうち、頚椎および胸椎の前面に位置する4つある椎前筋群の1つになる。
第6あるいは第5頚椎からの起始が欠如することがある.その時にはこの筋に第2頚椎,時にはさらに第1頸椎からの起始が加わっている.この筋は1つの細い筋束によって頚長筋と結合している.環椎からの起始が独立していることがある(3%)
・起始:第3〜第6頚椎の横突起の前結節
・停止:後頭骨底部の下面(2つある骨稜のうち前方のもの)
・神経:頸神経叢の枝(C1〜C4)
・作用:頭を前屈...