本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。けだし、本人の追認拒絶により無権代理行為は本人に効力が及ばないことに確定し、追認拒絶後は本人であっても追認により無権代理行為を有効にすることはできないところ、追認拒絶後に無権代理人が本人を相続しても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。
ゼミレポート
本人による追認拒絶後の無権代理人の本人相続
《最高裁平成10年7月7日第二小法廷判決》
【事実】
Aが意思能力を喪失。
Aの長男Bが、Aを無権代理して、Yらと本件物件につき根抵当権設定契約などを締結し、登記を経由。
B死亡。相続人である妻Cと子Xらが限定承認。
Aが禁治産宣告を受け、Cが後見人に就職。
CがAを代理して、Yらに登記抹消を求める本訴提起。
一審係属中にA死亡。Xらが代襲相続により本件物件を取得し、訴訟を承継。
【争点】
無権代理行為の追認拒絶の法的意義。
本人を相続した無権代理人による、本人のした追認拒絶後の援用の可否。
第三者が無権代理人・本人を相次いで相続した場...