はじめに:現在の日本の取調べ事情と問題点
日本の刑事司法制度においては、現在、捜査段階における被疑者の取調べは弁護士の立会いを排除し、外部からの連絡を遮断されたいわゆる「密室」において行われている。しかし、これにはさまざまな問題点が存在する。
可視化をめぐる現在の状況
国内で被疑者取調べの適正化対策として取調べの可視化が唱えられてから、ほぼ四半世紀を経た。1983年にイギリスが実験的に被疑者取調べのテープ録音を開始したことは、すぐに国内にも紹介され、それまで問題意識を抱いていた弁護士の反響を呼んだ。しかし、80年代から90年代を通じて、取調べの可視化の実現に向けた機運が高まることは無かった。1999年、政府は司法をより国民の利用しやすいものにするため司法制度改革審議会を設置し、司法改革に着手した。これが引き金となり、司法制度改革のテーマの中に取り調べの可視化問題も取り入れさせようとする組織的な取り組みが始まった。
供述調書の作成
取調べにいたっては調書が作成されるわけだが、その内容は、供述した本人の言葉そのものが記録されるわけではなく、取調官があたかも本人になったかのようにして、調書に...