序
改革開放と市場経済化の進む中で、経済所有制の形態において大きな変動が生じ、そのことが個人所有権と私有財産をめぐる動向に対して少なからず影響を与えている。中国現行憲法の「第三改正」(1999年憲法修正案)では私有財産制の合憲性が承認された。国民の生活世界のすべてに干渉してきた政府が次第に企業経営活動や商取引から撤退していく、これが「分権譲利」の過程である以上、私有財産の合法性を認めざるを得ないものであるからだ。こうした中国における私有財産についての、その問題点と様々な議論をこれまでの憲法規定の変遷を概観した上で考えていきたい。
1、「私有財産」に関する憲法規定
まず、私有財産の憲法の変遷に関して以下に挙げる。
臨時憲法としての1949年共同綱領は、新民主主義時期の条件を反射して、「労働者、農民、小ブルジョワジー、民族ブルジョワジーの経済利益及びその私有財産を保護する」とし、「個人経営、私的資本主義経済、国家資本主義経済」を規定した。
1954年憲法は、「単独経営労働者所有制、資本化所有制」、「国家は法律に基づいて資本家の生産手段所有権とその他の資本の所有権を保護する」、「公民の私的財産の相続権を保護する」「国家は、何人も私有財産を利用して公共の利益を破壊することを禁止する」、「中華人民共和国の公共財産は、神聖不可侵である」公共財産を愛護し、擁護することはすべての公民の義務である。」等を規定した。
ここでの「私有財産」は、個人所有、数人所有の自己使用あるいは賃貸住宅及び火住宅用家屋のように、その範囲はごく限定的であり、「私有財産制」の復活につながるものは排除された。1975年憲法は文化大革命の強い影響を受けて、相続権の規定を削除するなど、個人の私有財産権を否定し、「国家は、公民の労働収入、貯蓄、家屋及び各種の生活手段の所有権を保護する」とした。
中国の財産制度について
7月27日提出
序
改革開放と市場経済化の進む中で、経済所有制の形態において大きな変動が生じ、そのことが個人所有権と私有財産をめぐる動向に対して少なからず影響を与えている。中国現行憲法の「第三改正」(1999年憲法修正案)では私有財産制の合憲性が承認された。国民の生活世界のすべてに干渉してきた政府が次第に企業経営活動や商取引から撤退していく、これが「分権譲利」の過程である以上、私有財産の合法性を認めざるを得ないものであるからだ。こうした中国における私有財産についての、その問題点と様々な議論をこれまでの憲法規定の変遷を概観した上で考えていきたい。
1、「私有財産」に関する憲法規定
まず、私有財産の憲法の変遷に関して以下に挙げる。
臨時憲法としての1949年共同綱領は、新民主主義時期の条件を反射して、「労働者、農民、小ブルジョワジー、民族ブルジョワジーの経済利益及びその私有財産を保護する」とし、「個人経営、私的資本主義経済、国家資本主義経済」を規定した。
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