(1)これを知ったEは、Hに対して本件別荘の明渡を請求した。認められるか。
(2)Hが本件別荘の単独所有権を取得することは可能か。
2、遺産分割前にBは自己が居住する本件マンションについて、法定相続持分2分の1に基づく持分権を不動産業者Jに譲渡した。Jは、CDEFに対して、Jが本件マンションの単独所有権者となる代わりに、価格による賠償を行うことを提案したのに対して、CDは賛成したが、EFは反対した。本件分割請求につきどう解すべきか。
1、Dは遺産分割前に本件別荘を自己の単独名義にし、これをHに売却している。
(1)EはHに対し、本件別荘の明渡しを請求できるか。
そのためには、DのHに対する売買契約が無効であることを要するが、ここで、相続人の一人による遺産分割前の相続財産の処分の可否が問題となる。
ア、まず、Dは遺産分割前に本年別荘を自己の単独名義にしているが、この登記は有効か。
この点、相続財産は相続人全員の共有に属し(898)、各相続人がそれぞれ法定相続分に従った割合で相続財産につき所有権を有する(900)。
よって、遺産分割前であっても、自己の持分については有効に自己名義の登記をなすことができるが、自己の持分を超えた分の登記については無効である。
本問では、Dは遺産分割前に3000万相当の別荘を自己の単独名義にしたのであり、それはDの持分割合を超えている。
よって、Dの本件別荘についての登記は無効である。
イ、しかし、共有物の持分権は独立の所有権と同様の扱いを受けるので、自己の持分権は他の共有者の承諾なしに自由に処分することができる。
このことから、DのHへの本件別荘の売買契約は、Dの持分についてのみ有効にならないか、本問では本件別荘の共有は相続により開始しており、通常の共有とは法的性質を異にするのではないか問題となる。
【1】A及びBは甲土地を共有していた。この場合に、次の記述は○か×か。理由とともに述べなさい。
(1)第三者Cが、甲土地は自分の土地であると主張している場合に、AはBとともに主張するのでなければ、単独で、甲土地の所有権をCに主張することはできない。
→× 各共有者は単独で持分権の確認を求めることはできる。但し、共有物全体の所有権確認は、共有者全員で行わなければならない。
(2)無権利者である第三者Cが勝手に甲土地の登記名義をCにしてしまった場合、Aは単独でCに対して登記の抹消を請求できる。
→○ 共有物の保存行為は単独で行うことができる(252但書)。
(3)AはBの承諾がなくても、甲土地に対する共有持分を第三者に譲渡することができ、これは、ABが遺産相続により甲土地の共有者となっていた場合でも同じである。
→○ 共有持分の処分は自由に処分することができる。遺産による共有の場合にも、遺産分割前に持分を譲渡することができる(909但書)。
(4)Aが自己の負う負債の担保として、Bに無断で甲土地に抵当権を設定することは、Aが将来債権を弁済できればBには不利益とはならないのだから、可能である...