公共事業とは
現在、公共事業関係費は約9兆円に上り、日本の歳出全体に占める割合も大きい。社会資本の整備は財政においてそれだけ重要な役割を持っている。
一般に公共事業、あるいは公共投資と呼ばれるものには、河川、港湾の整備や道路の建設、上下水道の整備や公園の設置などが挙げられる。これらの事業は効果の外部性が大きいことや事業規模が膨大で私的な経済活動だけでは整備充実が期待されない。このため、国が国民から財源を徴収し、社会資本を建設・整備する必要があるのである。また、事業を行うことで雇用を促進し、二次、三次の経済効果を生み出す効果も期待されている。
日本の社会資本は、第二次世界大戦で破壊されたこともあり、その整備水準は今とは比べ物にならない程低かった。そのため、公共事業の必要性も高く、それに対する国民の受ける利益も大きかった。しかし、近年になって整備水準が上がったことで、事業の実施に対する需要も薄れ、実施そのものに対する疑問が生じてきた。
また、公共事業の景気対策としての効果にも強い批判が出てきている。実際、欧米での公共事業の多くは、資源の再分配としての目的のみで行っており、景気対策としての手段に使うということは、最近ではまったくといっていいほど無い。むしろ、公共事業を行うために発行した国債の累増によって、将来の大幅増税を予測させ、民間の消費を抑制していると言われている。したがって、景気対策として公共事業を行うのには疑問があるというわけである。
公共事業の実施に当たっては、これまでは「やらないよりやった方がいい」というのが判断基準であった。ただ近年において、財政難が続く中で、この考え方を続けるわけにはいかない。今までの公共事業を見直すことは必要不可欠であると考える。
公共事業を見直す
目次
公共事業を見直す
第一章 はじめに
公共事業とは
第二章 土木建築型公共事業の歩み
ⅰ 全国総合開発計画
ⅱ 各全総の投資配分の変化
ⅲ 各全総の投資配分の位置づけ
ⅳ 全総路線の破綻
ⅴ 五全総が目指すもの
ⅵ これからの公共事業
第三章 社会福祉型公共事業の試み
ⅰ 公共事業の転換
ⅱ 少子高齢化の現代社会
ⅲ 社会福祉の経済効果
ⅳ 社会福祉を公共事業に
第四章 おわりに
より良い公共事業を
第1章 はじめに
公共事業とは
現在、公共事業関係費は約9兆円に上り、日本の歳出全体に占める割合も大きい。社会資本の整備は財政においてそれだけ重要な役割を持っている。
一般に公共事業、あるいは公共投資と呼ばれるものには、河川、港湾の整備や道路の建設、上下水道の整備や公園の設置などが挙げられる。これらの事業は効果の外部性が大きいことや事業規模が膨大で私的な経済活動だけでは整備充実が期待されない。このため、国が国民から財源を徴収し、社会資本を建設・整備する必要があるのである。また、事業を行うことで雇用を促進し、二次、三次の経済効果を生み出す効果も期待されている。...