権力分立は、自由主義的な統治機構の原理として近代諸国の憲法の本質的内容を刑造るものであるが、その具体的あり方は、それぞれの歴史的事情に応じて多様である。わが国の場合、先にみたような議会制民主主義の原理にウエイトを置きつつ、これを権力分立の原理と調和させている。そこから、議会と行政権との関係については、議会によって行政権を統制する仕組みである議員内閣制がとられている。議員内閣制とは、内閣がその存立の基盤を議会に求め、議会に対して責任を負う制度、違う言い方をすれば、国民代表機関としての下院における多数党あるいは多数を制する政党連合が内閣を組織し、内閣は議会に対し連帯して責任を負い、また官僚は原則として議席を持つなどの基本的要素をそなえた制度である。それは、アメリカ合衆国にみられるような、大統領と議会が、個別に国民から選出され独立して行政権と立法権を担当する「大統領制」とは対蹠的であり、またフランス革命期の国民公会やスイスにみられる、議会によって選出される政府が憲法上会議に全面的に従属する「議会統治制」とも異なる。
議員内閣制は、18世紀中頃から19世紀前半にかけて、イギリス議会政治において憲法慣習として発達したものである。
議員内閣制について…
権力分立は、自由主義的な統治機構の原理として近代諸国の憲法の本質的内容を刑造るものであるが、その具体的あり方は、それぞれの歴史的事情に応じて多様である。わが国の場合、先にみたような議会制民主主義の原理にウエイトを置きつつ、これを権力分立の原理と調和させている。そこから、議会と行政権との関係については、議会によって行政権を統制する仕組みである議員内閣制がとられている。議員内閣制とは、内閣がその存立の基盤を議会に求め、議会に対して責任を負う制度、違う言い方をすれば、国民代表機関としての下院における多数党あるいは多数を制する政党連合が内閣を組織し、内閣は議会に対し連帯して責任を負い、また官僚は原則として議席を持つなどの基本的要素をそなえた制度である。それは、アメリカ合衆国にみられるような、大統領と議会が、個別に国民から選出され独立して行政権と立法権を担当する「大統領制」とは対蹠的であり、またフランス革命期の国民公会やスイスにみられる、議会によって選出される政府が憲法上会議に全面的に従属する「議会統治制」とも異なる。
議員内閣制は、18世紀中頃から19世紀前半にかけて、...