ソーシャル・ツーリズムはさまざまに解釈され、さまざまな形態で実践されている。ソーシャル・ツーリズムの研究と実践の主導者であったフンツィカー(Hunziker,W)は、その対象を低所得者層の人であるとした。OECD(Organization for Economic Cooperation and Development 経済協力開発機構)は、旅行資金に乏しいか、旅行に馴染んでいないか、あるいは教育の不足ないしは旅行情報に疎い、などいろいろな理由で今日まで観光旅行の埒外にあった大きな国民層を観光往来に参加させるために必要な状態をつくりあげることである。このように、ソーシャル・ツーリズムの主たる目的は、あらゆる人々が観光を楽しめるように保証し、支援することであり,精神的障害を理由に観光旅行に参加できない人々をとくに援助することになる。
そして、ソーシャル・ツーリズムは、観光政策であり、社会政策であり、青少年の教育政策であり、生産性向上運動であると言える。ソーシャル・ツーリズムの内容は定額所得者の休暇旅行に便宜を与える各般の制度を包含するが、有給休暇制度の拡充、休暇旅行の購買力の増大、旅行費用の軽減、旅行シーズンの援助の4つに大別し、具体的には、国や地方自治体(場合によっては、企業、労働組合、その他の関連機関)が休暇手当の支給、各種割引措置、廉価な宿泊施設など余暇施設の整理、特別な情報提供などを実施することである。
ヨーロッパにおけるソーシャル・ツーリズムの実際として、1939年構想、設立した「スイス旅行公庫共同組合」(REKA)では「スイス国民にはみなにバカンスの権利があり、全国民のバカンスの実現に協力するのは国民1人ひとりの義務である」と主張した。また、その事業活動では、旅行と休暇のための貯蓄・支払や、割引となる旅行スタンプの販売、家族旅行のための特別な対策、観光関係印刷物の発行などである。